レビュー
THE YELLOW MONKEY | 2013.12.04
彼らがなぜ「ザ・イエロー・モンキー」だったのか。なぜ「パンドラ」なのか。それをつぶさに炙り出したドキュメントフィルム。
1998年4月から99年3月に亘り、延べ55万人を動員したザ・イエロー・モンキー「PUNCH DRUNKARD TOUR」を中心に、バンドの濃密な1年間を追った1時間50分。単なる記録として残すことだけを念頭においていたのだろう、音も映像もパッケージ化されたライヴ作品とは一線を画す粗さだ。さらにその明度の低さも加わって、かつて盛んだったフィルムコンサートを彷彿とさせる。バンドの鋭さ、妖艶さ、そして生身の人間がもつ逞しさ、危うさ、馬鹿馬鹿しさは、おそらくハイ・ヴィジョンのそれよりも際立っている。
ライヴ・シーンはもとより、フォトグラファー・有賀氏撮影の写真、そしてツアースタッフのインタヴューを絶妙に交えた流れの中で、これまで断片的には知られていたバンドにまつわる事実が、強力なリアリティを帯び、ひとつの塊となっていくのがわかる。「開けてはいけないもの」の中身は相当に熾烈だ。とりわけ、後のバンドに大きな影響を与えた97年フジロックの楽屋で吉井が見せた険しい表情には息を呑むしか術がない。
113公演を戦いきったツアー最終日。客席をバックに撮った写真を、かつて吉井は「遺影のようだと例えた。粋を貫くヒーセ、負けず嫌いの弟・アニー、破顔のエマにあって、サテンのガウンを脱ぎ、序盤ですでに華やかな羽のショールさえ外してしまったファイナルらしからぬ質素な“ロビン”のステージ衣装が示唆的だ。
時は流れ2013年、解散から9年を経た4人はボーリングに興じ、笑顔で過去を振り返り、未来を見据えていた。そしてこの映画はザ・イエロー・モンキーの歴史の中のひとコマに過ぎない。
【文:篠原美江】
【撮影:Mikio Ariga】
リリース情報
[DVD]パンドラ ザ・イエロー・モンキー PUNCH DRUNKARD TOUR THE MOVIE(初回限定盤)
発売日: 2013年12月04日
価格: ¥ 7,000(本体)+税
レーベル: アリオラジャパン
収録曲
[DISC 1]
映画本編113 分+ 特典映像(未公開ver.ライヴ 3 曲/ツアー最終日終演後の楽屋映像 ほか貴重映像収録)
[DISC 2]
1998年7月20日 ロンドン・アストリアでのフルライヴ映像(77min.収録)
1. パンチドランカー
2. LOVE IS ZOOPHILIA
3. BULB
4. 間違いねえな
5. ゴージャス
6. ?して ?して
7. クズ社会の赤いバラ
8. セックスレスデス
9. 天国旅?
10. SUGAR FIX
11. LOVE LOVE SHOW
12. 悲しき ASIAN BOY
13. SUCK OF LIFE