レビュー
SMAP | 2013.12.11
SMAP『シャレオツ / ハロー』
尾崎“SMAP”観
SMAPは 「夜空ノムコウ」(作詞・スガシカオ/作曲・川村結花)、「世界に一つだけの花」(作詞/作曲・槇原敬之)など、有名無名を問わず優れたソングライターを積極的にピックアップするのが得意。前作シングル「Joy!!」は話題のガールズバンド“赤い公園”の津野米咲の作詞・作曲で、初期のSMAPを彷彿とさせるテイストの作品だった。つまり、津野が思い描く理想のSMAP像が反映されていたわけだ。個性的なソングライターにとって、SMAPはひとつのメディアであり、SMAPを通してそのソングライターの考えや特性が見えてくる。
そして今回の両A面シングル『シャレオツ / ハロー』の「ハロー」は、なんとクリープハイプの尾崎世界観が詞曲を提供している。果たしてそこには、尾崎のどんな“SMAP観”が盛り込まれているのだろうか。
尾崎の楽曲は、独特のキャラクターを持っている。それは“毒”と言ってもいい。特にラブソングにおいては、相手や自分に対しての不信感や、 渦巻く性欲も包み隠さず描き出す。そんな尾崎が、今回SMAPに何を託すのだろうかと、興味シンシンで聴いてみた。
曲調は、穏やかなミディアム・ロック。歌詞も穏やかな愛の告白に聴こえる。だが、尾崎はそこに巧妙に自分らしさを忍ばせた。♪いつでも君が決めた事をただ信じられますように♪というフレーズは、一見、普通のセリフに聴こえるが、その前提に“素直には君を信じられない僕”がいる。さらに「ハロー」の最後は、♪あっそういえば忘れてたポケットの奥から 少しくしゃくしゃの『君が好き』♪と結ばれる。
「そんな大事なこと忘れるなよ!」と突っ込みたくなる。「くしゃくしゃにするんじゃねーよ」と文句を言いたくなる。だが、これが尾崎のラブソングなのだ。少し照れて、とても純粋で。そう、尾崎がSMAPに託したのは、青年以上、大人未満の純情。少年のように無垢でない代わりに、自分と向き合ったからこそ告白できる、ホロ苦い愛の深層なのだ。
歌詞はほとんど間を空けずに、大量に詰め込まれている。その“ニセの饒舌”が、♪君が好き♪というたったひとつのメッセージを引き立たせている。たったこれだけのことを伝えるために「ハロー」を書いた尾崎は、愛を疑うことを止めないクリープハイプらしいSMAP観を提示している。
実にいいヒビ、入ってるね、尾崎くん!
【文・平山雄一】