レビュー

平山雄一 ウィークリーレビュー | 2014.01.22

連載 第9週
新春企画「ライブなひび」


 昨年観たライブは117本。その中での平山のベスト3は、以下の3本だ。

■2月27日 奥田民生VS ASIAN KUNG-FU GENERATION@Zepp TOKYO
■5月19日 サカナクション@幕張メッセ
■8月16?17日 RISING SUN ROCKFESTIVAL 2013 in EZO

 昨年2月、平山は2冊目の評論集『弱虫のロック論』を出したのだが、そのリリースパーティとして開催したのが、奥田民生 VS ASIAN KUNG-FU GENERATION。評論集に登場する重要アーティストでイベントをやりたかったから、この組み合わせが実現したときは、奇跡だと思った。

 奥田は“ひとり広島球場”で当時デビュー間もないアジカンの「君という花」をカバー。少年時代から奥田のファンだったという後藤正文は、このライブを観に行っていた。それだけに当日は互いのリスペクトが爆発して、セッションも含めて大盛り上がり。終わった後、後藤は「中学生の自分に見せたかった」と語っていた。自分のイベントながら、このライブは一生忘れられない。

 ライブの度に新しい“何か”にチャレンジするサカナクションの幕張メッセは、ドルビー社の6.1サラウンド・システムを導入。このライブは スピーカー228本を使用して、広い会場のどこにいても同じ音像を提供するというもの。低音も充分に効いていて、クラブで音楽を聴く楽しさを超大人数で共有するチャレンジだった。サカナクションは活力を失いかけている音楽シーンに、改めて“音楽の楽しさ”をアピールし続けている。平山は、2万人が同時にハンドクラップする音を、生まれて初めて聴いて大いに感激。ビッグサイズのライブはたくさん観て来たが、会場が広いと前と後ろではどうしてもクラップの音がズレてしまう。だが、このライブはピッタリ揃って、前代未聞の高揚感を味わったのだった。

 RISING SUN ROCKFESTIVALは昨年で15回目を迎えたというのに、恥ずかしながら平山は初参戦。これだけライブを観ていても、なぜか別件ができてしまい、どうしても“縁のないイベント”というのがあったりする。しかし、ようやく去年、念願を果たしたのだった。そして噂どおりの“音楽好き天国”っぷりに感動。
 出演アーティスト同士が意気投合してすぐにセッションが実現したり、おいしいものだらけのケータリング・スペースでは面白いコラボ話が生まれたり。そんな開放的な環境は、演奏にも好影響があり、 斎藤有太、大橋トリオ、クリープハイプ、奥田民生、THE NOVEMBERSの小林祐介が入ったChara、実力を見せつけたMISIAなど、最も幸せなフェス体験のひとつになった。

 その他、とてもよかったライブは以下のとおり。

・2月9日 ショパン・ピアニスト仲道郁代@浜松アクトホール
2月1日 地球三兄弟@Zepp DiverCity
・4月12日 ジム・クエスキン・バンド@日本橋三井ホール
・4月14日 岡村靖幸@Zepp DiverCity
4月28日 布袋寅泰@NHKホール
・5月20日 マニッシュボーイズ@新木場コースト
6月15日 サカナクション@台北the wall
6月29日 THE NOVEMBERS@恵比寿ガーデンホール
・8月11日 WORLD HAPPINESSの キリンジ@夢の島
・9月12日 後藤まりこ presents 「シブヤコ」のtricot@赤坂ブリッツ
9月14日 スピッツ@横浜赤レンガ倉庫
9月15日 アジカン@横浜スタジアム
・9月18日 VAMPS@Zepp TOKYO
9月27日 スガ シカオ@Zepp DiverCity
・10月25日 “HALLOWEEN PARTY”のねごと@幕張メッセ
11月2日 パスピエ@リキッドルーム
・11月19日 ポール・マッカートニー@東京ドーム
11月23日 赤い公園@東京キネマ倶楽部
・11月25日 イベント“しーたか40”@SHIBUYA AX
11月26日 椎名林檎@オーチャードホール
11月28日 奥田民生@中野サンプラザ
12月4日 Dragon Ash@EX THEATER ROPPONGI
・12月8日 ゴスぺラーズ@東京国際フォーラム
12月13日 The Birthday@渋谷クアトロ
12月16日 阿部真央@東京国際フォーラム
12月18日 大橋トリオ@恵比寿ガーデンホール
・12月25日 東京スカパラダイスオーケストラ@恵比寿ガーデンホール
12月27日 SPYAIR@渋谷公会堂
12月31日 藤井フミヤ@日本武道館

 全体に演出に関して、最新のものと古臭い手法が混在する状況で、今後、その格差がもっと顕著になるだろう。お金をかけるのではなく、新しい意識でライブに取り組むアーティストが、2014年により輝くことになると思う。

 たぶん平山は今年、生涯ライブ5000本を達成する予定。それが一体、誰のライブになるのか楽しみだ。さあ、たくさん観るぞー!

【文・平山雄一】

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