レビュー
オワリカラ | 2014.03.05
オワリカラ
『サイハテ・ソングス』
ハジメマデ、あとちょっと
普通の言い方では「初めから、終わりまで」なのだが、この バンドの名前は“オワリカラ”。つまりは「終わりから、初めまで」の空虚な時代の歌を紡ごうという奴らだ。
ボーカル&ギターのタカハシヒョウリをはじめとする4人の メンバーは、とにかく過去のロックをよく知っている。60年代から2010年代までの50年間のロックの歴史を、出来得る限り体感してきた。その歴史とは、ひとつのムーブメントが終わりを告げると、次のムーブメントが起こるというアップデートの繰り返し。それが短期間にこれだけ行なわれたアートフォームは、ロックをおいて他にはない。だからこそオワリカラは、自分たちが“終わりから”の時代に在ることに気付いたのかもしれない。
このアルバムのリードトラック「サイハテソング」は、♪最果てまで 届く歌が 知りたいだけ♪と歌う。きっとタカハシは昔、彼の心の最果てに届く歌を聴いたことがあるのだろう。それがこの時代にあるのかと問う。♪瞬間なんて 儚くても 歌わせてくれ♪と願う。その声にリアリティがあるのは、彼が心底ロックを愛し続けてきたからだ。
ただ、その愛し方は、普通とはちょっと違っていた。歴史を愛するあまり、こだわりが裏目に出て、クイズよりもヒントに比重を置き過ぎていたように思う。が、今回のアルバム『サイハテ・ソングス』では、問い掛けがとてもストレートになっている。いや、問い掛けというより、願望になっている。クイズではなく、メッセージになっている。もちろん、これまでいろんなやり方でリスナーに問い掛けてきたからこそ、真摯で謙虚なメッセージを生むことができたのだ。♪どうせ何も持たずに死ぬのだ そっと前に飛べ♪(「サイハテソング」より)という メッセージは、アルバムのラスト「L」の♪俺らのねぐらを作るんだ♪というささやかな提案へとつながっていく。
最果てと言えば、もう25年も前、僕はハウンドドッグというバンドのライブ取材で、稚内まで行ったことがあった。北の果ての宗谷岬で、僕はロシアに向けてサイハテ・ホームランを打ったことがあるけどね。
ヒョウリくん、ハジメマデ、あとちょっと! さあ、行こう、オワリカラ。
【文・平山雄一】