レビュー
The Renaissance | 2014.03.19
The Renaissance
『Renaissance 1er』
“世界基準”のJ-POP
奥田民生のライブバンド“MTR&Y”のRこと小原礼と、屋敷豪太(藤井フミヤや槇原敬之のツアーに参加)の新ユニット“The Renaissance(ザ・ルネッサンス)”が、アルバム『Renaissance 1er』でデビューした。礼さんは1972年、サディスティック・ミカ・バンドにベーシストとして参加。日本のバンドとして初めてイギリス・デビューを飾った。その後、アメリカでグラミー賞歌手ボニー・レイットのツアーに同行している。豪太さんはミュート・ ビートで活躍後、イギリスに渡ってシンプリー・レッドのドラマー&プログラマーとして大ヒットアルバム『Stars』を手掛けた。世界的に有名なリズム・プレイヤー2人のデビューなのに、『Renaissance 1er』は、大方の予想を裏切って全曲2人の歌入り。しかも日本語詞(1曲のみフランス語)の純J-POPアルバムなのだ。
僕は2人が帰国してから、どんな活動をするのか、興味しんしんで見ていた。ものすごく洋楽チックなプロジェクトを立ち上げても不思議じゃないミュージシャンなのに、そうはしなかった。彼らは、自分たちが留守にしていた間に日本で育ったJ-POPやJ-ROCKの後輩アーティストに、“世界基準のグルーヴ”を提供。民生をはじめ、スガ シカオや槇原など、今の音楽シーンを牽引する才能の進化に力を貸した。
それもそのはず、2人はもともとドラムやベースを始めたときから大の歌好きで、自分たちでもよく歌って楽しんでいた。その後、日本で出会って、ハモってみたら、これがナイスな響き。なので、The Renaissanceを結成したのだという。そんな経緯を知ったら、このアルバムの内容に納得した。納得どころか、キュートな美メロにユーモラスな歌詞の乗った、ハイクオリティのJ-POPなのだから嬉しくなる。さすが“ロック・レジェンド”と言いたくなるグルーヴが そこに加わって、リスナー冥利に尽きるのだ。今回、The Renaissanceが 生み出したのは、“アップデートされた世界基準のJ-POP”。それは今までありそうでなかった、フレッシュで魅力的な音楽だ。
たとえばリードトラックの『「愛のために」とか言っちゃって』は、大人のシャイな恋心を絶妙なタッチで描いていて、笑いながら共感できる。そこには民生たちが築いてきた“2010年代のJ-POP&J-ROCK”のエッセンスと、小原と屋敷が身に付けてきたサウンドが同居している。先の言葉を正確に言うと、J-POP&J-ROCKの良心と、世界基準のグルーヴが結びついたのが、The Renaissanceなのだ。
だからThe Renaissanceを、すべてのJ-POP&J-ROCKファ ンに聴いて欲しい。若い世代が未来を作るのは確かだが、小原と屋敷はすでに未来を生きている。未来のJ-POP&J-ROCKは、大笑いして楽しむ大人のものなのだ。
【文・平山雄一】