レビュー
THE BOOM | 2014.04.02
THE BOOM
ロックバンドは歩いてはいけない
3月31日、僕の手元に一通の手紙が届いた。配達日指定は珍しかったので、少し緊張して封を切ると、THE BOOMの解散の報せが入っていた。
1989年、バンドブームのまっただ中に原宿の歩行者天国から、THE BOOMは登場した。初期はスカのリズムが軽快な「君はTVっ子」などでオーディエンスを踊らせ、90年代に入ってからは沖縄やブラジルなどエスニック・ミュージックに挑戦。僕は節目節目の日比谷野音ライブを観て来たが、彼らは常に変化を求めて走り続けてきた印象がある。
昨年、ボーカルの宮沢和史とベースの山川浩正が病気になってしまい、走ることができなくなったと手紙には書いてあった。
「THE BOOMはロックバンドです。ロックバンドは歩いてはいけません。」と宮沢は今回 の解散について述べる。「やり残した事がまだあるなら、這ってでも進みますが、4人でやれる事は全部やりきったかな…今は正直そう思っています。」と続ける。「これからの人生は、走っていては見えないものをしっかりと見つめてゆっくり歩いてみたい」。
THE BOOMは、たくさんの試行錯誤を繰り返してきたから、すべてやりきったのかもし れない。2009年、20周年アルバム『四重奏』でオーソドックスな8ビートを堂々と演奏する4人の音を聴いて、何まわりもして原点に戻ったことを感じた。このとき宮沢は、「デビュー当時は普通のことをちゃんとやれなかった。ようやくできるようになった」と照れくさそうに語っていたが、そこには幾多の“ひび”を乗り越えてきたTHE BOOMにしかできない、8ビートのニュアンス がきちんと息づいていた。
2011年のツアーは、震災を受けてツアー・タイトルも内容もすべて変更して実施。僕が観た調布市グリーンホールでは、開演前に、仙台で被災した舞台監督が注意事項を読み上げて、このバンドの真摯さと公正さを感じた。そんなことを考えていたら、亡くなったhideが「島唄」をとても愛していたことを思い出した。上條恒彦がカバーした「中央線」を聴きたくなった。
すべてに真っ直ぐなバンドだった。25周年ヒストリー・アルバムが9月にリリースされ、同時にラストツアーが行なわれる。ありがとう、THE BOOM!
【文・平山雄一】