レビュー
スガ シカオ | 2014.05.28
連載 第22週
スガ シカオ
「アストライド/LIFE」
ファンクの背中にまたがって、 ゴーゴー、
スガシ カオ!
スガ シカオ
「アストライド/LIFE」
ファンクの背中にまたがって、 ゴーゴー、
スガシ カオ!
スガ シカオのルーツは“ファンク・ミュージック”にある。ファンクというとリズムそのものに興味が行ってしまいそうになるが、実は歌詞がとても重要な位置を占める音楽なのだ。へヴィーなグルーヴを持つファンクのリズムは、それだけでリスナーの身体を動かす力を持っている。だからこそヘナチョコな歌詞では言葉が吹き飛ばされてしまう。逆に言えば、どんなにへヴィーな言葉でも、ファンクのリズムに乗せれば、ちゃんと伝わる。元々、ファンクは、アメリカ社会の弱者であったアフリカ系の人々から生まれた。彼らの叫びを伝えるために、あの強力なリズムが誕生したのだ。
ダブルA-SIDEシングルのうち、「アストライド」のトラックは、ファンク・ミュージックの色彩が強い。当然、歌詞もファンク=重たいメッセージを含んでいる。一度、メジャーシーンを離脱して、今回2度目のメジャー・デビューとなるスガは、そうした成り行きの中で思索した“歌うことの意味”や、アーティストとしての生き方を赤裸々に歌詞で描く。そしてスガはそんな重いリズムと歌詞を、独特のクールなタッチで歌う。このギャップが、スガの“すばらしいヒビ”なのだ。軋みを上げる重い言葉を重々しく歌われては、聴く方は説教臭くてたまったものではない。だが、ファンクのリズムの力に乗って軽々と歌われると、苦しみの向こう側に希望の光が見えてくる。
ちなみにアストライドは、“またがる”という意味。ファンクの背中にまたがって再出発するスガは、たくましさを増したようだ。「Progress」の系譜を継ぐ名曲の誕生だ。
【文・平山雄一】