レビュー
キュウソネコカミ | 2014.06.19
【EMTG Coming Up Artist 2014】に選ばれた兵庫県・西宮在住のパンクロックバンド、キュウソネコカミの最新ミニアルバム『チェンジ ザ ワールド』を6/18にドロップ!
2014年、生ぬるい音楽シーンに爪痕を残すのは間違いなく彼らだ!!
唖然。呆然。開いた口が塞がらないまま大笑い。思考回路を通る前に相手を取り込んでしまう。その理由は、その破天荒さや面白さだけにあらず。だってそれだけだったら、ただの噂だけだったでしょうよ、というのが本音であります。
噂を瞬間風速でぶっちぎった感のあるキュウソネコカミ。彼らがこれだけ支持されているのは、サウンド、歌詞、ライヴを通して伝わってくるキャラクター、そのパフォーマンス、ルックス、発言などなど……すべてが、ジャストミートだからなのではなかろうか。前述したすべての要素が、オリジナリティーを構成する強烈なネタになっているのだ。この開き直りっぷり(って言っていいんでしょうか)、眩しいくらいです。
メジャー作『チェンジ ザ ワールド』は、ハチャメチャな展開ながらキャッチーなフレーズが満載の楽曲がズラリと並ぶ。歌詞は、これまで同様、己の現実や日常(含・音楽シーン)をシニカルに愚痴のように綴るものが中心だが「ビビッた」(M1)のように、堂々と“自分たちの現状”をネタにしてきた潔さ&豪快さには、拍手喝采。
なんてこと書いたけど、個人的には、日々まとめちゃんねるを愛読している者としては、まとめ読んでいる人達、結構いると思うんだよね、この人たちがじつは今の社会のメインなんだよね、主役なんだよね……と思っていたりして、その主役が鮮やかに登場してくれたことが、何よりも痛快で下剋上みたいでとても嬉しいのです。母ちゃん(と同年代だと思う)、あなたたちがどんなに笑われても、一緒に大笑いして、ずっと応援してますよ。
【文・伊藤亜希】
キュウソネコカミのインディーズ時代のアルバムに『大事なお知らせ』(2012年)という作品がある。当時、メンバーはそのタイトルの理由を「(公式サイトで)これならクリックしてくれるから」と話していた。なるほど。バンドが公式HPで「大事なお知らせ」を出す時は大抵メンバーの脱退か活動休止か、解散か。ネガティブな情報が多い。そして、人はネガティブ情報に群がる。好奇心でクリックすると、作品にリンクする、ナイスアイディア!バンドが頭ひとつ抜き出るには、時にそう作品には本質的に結びつかない努力が必要だったりもする。
そんなキュウソネコカミが『チェンジ ザ ワールド』で遂にメジャーデビューを果たした。
もはやタイトルの小細工は必要ない。この作品から浮き彫りになるのは、毒舌悪口バンドと言われるキュウソネコカミが、いかにマジメに生きることに向き合うバンドかということだ。リア充になれない僕も、魔法を信じる現実逃避も、お酒にすがる弱さも、カワイイだけで中身のない空っぽも、彼らの歌の登場人物たちは悲しいほど健気に生きている。まるで傷口に塩を塗るように自虐的な言葉で表現されるそれらが、独特の哀愁になり、共感を呼び、結果キュウソネコカミのもとに人は集まるのだ。
ちなみに、このアルバムのリード曲「ビビった」は、“メジャーデビュー”をネタにした1曲で、その中には《評価のされ方わかんねぇ 誰が得なんだこの賞?》というフレーズがある。何を隠そう、本年のはじめ、EMTG MUSICでは「Coming Up Artist 2014」にキュウソネコカミを選出。受賞の動画コメントまでもらってしまった。この曲のきっかけは実はここかも!? あぁ、耳が痛い。
【文・秦理絵】