レビュー
小田和正 | 2014.07.02
小田和正 『小田日和』
禁断のヒビ=カウンター・メロディ
小田和正の魅力の一つに、“カウンター・メロディ”がある。主旋律に対して、独立したもう一つのメロディ=カウンター・メロディが絡むことで、音楽が大きく膨らむ。主旋律に寄り添う“ハーモニー”と違って、カウンター・メロディは高度な作曲テクニックが必要な“技”であり、一つ間違えれば主旋律が台無しになってしまうリスクもある。それこそ小田でなくては使えないと言っていいほどの“禁断のアレンジ”なのだ。絵画やファッションのコーディネートで“補色”というテクニックがあるが、カウンター・メロディはそれに似た相乗効果がある。
小田は以前、くるりとコラボしたとき、名曲「ばらの花」でこのカウンター・メロディを付けて歌い、周囲を驚かせた。いちばん驚いたのは、作者の岸田繁だったのではないかと思う。これ以上ないと思われる美メロが、小田のカウンターが加わることで、さらに輝きを放ったのだった。それにしても、大胆。下手をしたら岸田が怒っても不思議はないシチュエーションなのに、敢えて決行した小田の自信は相当なものだ。
そしてニューアルバム『小田日和』のオープニングを飾る新曲「そんなことより 幸せになろう」で、小田はこの禁断のアレンジを惜しげもなく使う。しかもカウンター・メロディを歌うのは、JUJUと松たか子という強力2トップ。現時点でのJ-POPの粋が聴ける歓びは、何ものにも代えがたい。
作曲技術が上がって、J-POP、J-ROCKともにやたらとCメロやら大サビが多用されているが、素晴らしい主メロと同じくらい素晴らしいカウンター・メロディの競演をぜひ聴いてほしい。余計な展開がないこの曲は、だからこそ4分間弱でしっかりメッセージを伝えてくれる。
それにしても、この最高のチームに参加したJUJUに、その感想を聞いてみたいものだ。
【文・平山雄一】