The Birthday、THEE MICHELLE GUN ELEPHANT、Superflyから松任谷由実、松田聖子。それぞれが影響を受け、好んで聴き、幼い頃から耳にしていたであろう多岐にわたる音楽の要素が、メンバー5人の演奏と作詞作曲を手がける中野ミホの手で、Drop’sの音楽として鳴らされている。それは正直すぎるほどに生き生きと。

　札幌在住の女性5人組、Drop’s。早熟のブルースロック、オールドロックとして形容された旧作の世界観を意識的に広げ、浸透力、訴求力を格段に増しているのが、このセカンドフル作『HELLO』だ。いつまでも同じカテゴリーに安住し続けていたら、過去の音源がいつの日か「早すぎた作品」として美しく片付けられたかもしれない。若く柔軟な姿勢で制作に臨んだと思しき新作を前にして、そんなことを考えた。

　泥臭いバンドサウンドの奥から、時に切迫した声で《ハロー》と歌いかける表題曲「HELLO」の“何かが変わるよ”、転がりながらフックのある構成で聴かせる「マイ・ロックスター」の《きのうまでのわたしには／もう戻れない”といったフレーズからは、自分たちのロックンロールを引っさげて、大衆に打って出ようとする覚悟すら感じられる。

　哀しみの成分を含んだ中野の特徴ある歌声、ソングライティングの確かさ、縛りを感じさせないバンドの音を武器にした弱冠20歳のロックンロールバンド。彼女たちが変化してゆく様をリアルタイムで体感しない手はない。

【文：篠原美江】