レビュー
阿部真央 | 2014.08.20
デビュー5周年のアニバーサリーイヤーを迎えた阿部真央から「シングルコレクション 19―24」が届けられた。タイトル通り、19歳から24歳までにリリースされたシングルをコンパイルした本作からは、デビューからの5年間における彼女の変化――シンガーソングライターとしてはもちろん、ひとりの女性としても――が驚くほど生々しく伝わってくる。
デビュー当初から阿部真央は、ちょっと心配になってしまうほど自分に正直だった。恋愛においても音楽においても、自分のなかにある感情(そこには葛藤やコンプレックスも含まれている)をしっかりと見つめ、どこまでもリアルな楽曲として表現する。そんな彼女のスタンスは「伝えたいこと」「貴方の恋人のなりたいのです」といったナンバーに強く反映されている。
その後、ポップなサウンドを取り入れた「ロンリー」、祈りにも似た真摯な思いを込めたバラード「光」など、徐々に作風を広げていった彼女。「世界はまだ君を知らない」からはセルフプロデュースにも挑戦。アレンジ、レコーディングにも深く関わるようになり、アコギの弾き語り、ヘビィロック系、ポップなテクノサウンドなどを自由に行き来するようなプロダクションにも注目が集まっている。
その中心にあるのはもちろん、彼女のボーカルだ。優しさ、愛おしさ、儚さ、悲しさ、切なさ。あらゆる感情をダイレクトに映し出すボーカリゼーションは、作品を重ねるたびに進化を果たしてきた。特に喉の手術から復帰した「最後の私」以降の表現力の高さは、現在のシーンにおいてもはっきりと際立っていると思う。
この5年間を振り返り、「大変なこともあったけど、“一切、手を抜かなかった”ということは自信を持って言えますね。一気に飛躍したわけではなく、少しずついろんなことを積み重ねてきた5年間だったんじゃないかな。そのほうが自分の性に合ってるし、がんばってきて良かったなって思います」という彼女。10月10日には初の日本武道館ライブも開催。5周年というターニングポイントを経て、“シンガーソングライター・阿部真央”の存在感はさらに強まっていくことになるだろう。
【文:森 朋之】