レビュー
syrup16g | 2014.08.28
syrup16g『Hurt』
今のロックに欠けている、
異様な緊張感こそ復活の証
syrup16g は、’08年3月、武道館ライブをもって解散した。今に繋がるロックシーンが形を取り始めた頃、それと逆行するようにsyrup16gは忽然と姿を消した。それでもボーカル&ギター、ソングライターでもある五十嵐隆の活動再開を待ち望むファンは多かった。
そして昨年、ついにsyrup16gは、ライブ活動を再開。今回、8枚目のオリジナル・アルバム『Hurt』をリリースする。
そんな経緯もあって、早速『Hurt』を聴いてショックを受けた。1曲目の「Share the light」のイントロのギターの音色とリズム、歌い始めた歌詞とメロディは独自のもので、今あるどのバンドとも似ていない。いちばん異様だったのは、サウンドにみなぎる緊張感だった。触れれば切れそうな鋭さと、殴りかかってきそうな拳の硬さ。それは現在のJ-ROCKにいちばん欠けている要素かもしれない。今のバンドの楽曲の大半は、緊張に耐え切れず、笑いやダンスに逃げてしまう傾向にある。だが、再開したsyrup16gの第1弾は、真っ向からテーマに向かい合い、強行突破しようとする。
8曲目「生きているよりマシさ」では♪死んでいる方がマシさ♪と、自分の生き方を逆説的に描く。だからラストナンバーの「旅立ちの歌」の♪最低の中で 最高は輝く♪というフレーズがリアルに響く。その気取りのないサッパリとした歌い方こそ、信頼に値する。
アルバムタイトルには、“傷つけられることも時には傷つけることもある”という意味が込められていると聞いた。とてつもない壁を、自分の手の骨にヒビが入っても打ち壊そうという覚悟がすべて なのだろう。syrup16g、とんでもないバンドの復活だ。
【文:平山雄一】