レビュー
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND | 2014.09.03
OVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND
『FOLLOW THE DREAM』
アコースティック・パンクが暴く、
シホンシュギの亀裂
何年か前の夏、僕が関わっている池上本門寺のイベントにOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUND(以下、OAU)に出演してもらったことがある。そのイベントは大人のためのミニ夏フェスで、主にアコースティク楽器を演奏するアーティストを招いていた。OAUのアイリッシュ・ミュージックのニュアンスたっぷりの音源を聴いて、即座に出演を依頼した。結果は、半分は狙い通り、半分は想像以上だった。クオリティの高さは思った通りだったが、彼らの音楽魂には想像以上のパンク・スピリットが含まれていて、正直驚いた。メンバーにBRAHMANのTOSHI-LOWがいることを考えれば、当然と言えば当然なのだが、アコースティック編成でモッシュを煽るパワーを持っていることにビックリしたのだ。そして、アイリッシュがパンクのルーツのひとつであることを思い至って、OAUの音楽に対する姿勢の正統性に感動したのだった。
5年ぶりのフルアルバムには、そんなOAUでなければ作れない歌が数多く入っている。中でも「N.A.C-Nothing After Capitalism-」という英語の歌が気に入っている。キャピタリズム=資本主義の後には何も残らないと歌う。よく使われる経済用語に“ベンチャー・キャピタル”とかがあるが、資本主義批判をはっきり歌ったものは今までの日本のロックシーンにはなかった。
みんなの自由のための資本主義は、とっくに死んだ。なのに、そこから離れられない矛盾が、人々を苦しめている。新聞や教科書で読めばうんざりして想像したくなくなるが、僕はOAUの歌を聴いて“資本主義の残骸”をはっきりイメージすることができた。聴こえてくるOAUの音は、あくまで美しい。だから現代社会に入ったヒビの痛みが、リアルに届き、骨に響く。
【文:平山雄一】