レビュー
SOIL&“PIMP”SESSIONS | 2014.09.10
SOIL&“PIMP”SESSIONS
『Brothers & Sisters』
自由と破壊を束ねて、リスナーの心にヒビ
昨年の10thアニバーサリー・ イヤーを駆け抜けたSOIL&”PIMP”SESSIONSは、今や日本の音楽シーンに欠かせないグループだ。ジャズの醍醐味をロック世代に“翻訳”してみせたり、パンクに潜むアナーキーな音楽性をインストで浮上させたり、そうしたセンスを椎名林檎やライムスターとのコラボで発揮したり、まさにオンリーワンの存在となっている。
そして11年目の最初の一歩となるのが、ニューアルバム『Brothers&Sisters』だ。内容は、グループの原点に戻って、ガチのインスト・セッション。スリリングなインプロビゼーション(即興演奏)が全曲に散りばめられている。高いテクニックはもちろんだが、原点に還ったことで彼らのスピリットに改めて光が当たることになったのが嬉しい。
簡単に言えば“普通のことをやりたくない人達”なのだが、別に奇をてらっているわけではない。ましてやジャズやロックやパンクを、ただ混ぜているのでもない。それらの音楽が持っている自由さや様式美や破壊力を、独自の感覚で束ねてリスナーの心を解放に導く点が凄いのだ。その凄さが、歌詞がないことによってはっきり伝わってくるところがこのアルバムの魅力だ。
スパッと切れるオープニング「Love Immediately」から始まって、ラテン・テイストのロマンティックなナンバー「Roots of Soil」など、どれも聴き応え充分。特に僕が好きなのは、ラストの2曲だ。
ドラムとサックスのみでバトルする「Red Sky」はたった2分20秒の曲ながら、アバンギャルドな魅力いっぱいで息つく暇もない。そして「Spartacus Love Theme」は10年のキャリアがぎゅっと詰まったピアノ・バラード。と言っても、ただのバラードではない。様々な音楽ジャンルの壁にヒビを入れまくる、セッション・スピリット満載の7分を超える大作だ。
今週末のNEW ACOUSTIC CAMPでは、このSOIL&”PIMP”SESSIONSと、先週紹介したOVERGROUND ACOUSTIC UNDERGROUNDが競演する。インストの魅力=楽器の音色を楽しむには最高のフェスになるだろう。どちらのバンドにも満ち溢れるパンクの精神を、青空の下でエンジョイできるなんて、幸せな秋だなあ。
【文:平山雄一】
リリース情報
Brothers & Sisters(初回限定盤)
発売日: 2014年09月03日
価格: ¥ 3,400(本体)+税
レーベル: ビクターエンタテインメント
収録曲
ディスク1
1. Love Immediately
2. Apple Gravitate Toward Core of Star
3. 表nothin’ 裏girl
4. Black Tie
5. Roots of Soil
6. Sonido Del Mar
7. Shout!!
8. I Wanna Love You
9. Danger
10. Red Sky
11. Two Naked
12. Spartacus Love Theme
ディスク2
10th Anniversary! LIVE AT AKASAKA 10th Feb, 2014
1. Crush!~SUFFOCATION~STORM
2.WALTZ FOR GODDESS
3. First Lady
4. SAHARA
5. Fantastic Planet
6. SUMMER GODDESS
7. A.I.E