本年デビュー20周年を迎えるゴスペラーズのオリジナルアルバム『The Gospellers Now』が完成した。

　彼らがオリジナルアルバムで、自身のグループ名をアルバムタイトルに掲げたのは、デビューアルバム以来のことである。アルバムのアートワークもデビュー盤と同様の構図だ。“ゴスペラーズの今”というタイトルといい、ジャケット写真といい、彼らの今の意志が詰まった1枚になっていると解釈できるのではなかろうか。 多彩なジャンル楽曲が並ぶ本作。豊富な楽曲バリエーションは、５人全員が作曲を手掛けるゴスペラーズならではの作風とも言えるが、ご注目いただきたいのは、コーラス・ワーク＝ハーモニーでも、豊かなバリエーションが堪能できること。自分たちの個性・強みをしっかりまっとうしながら、ここまでカラフルに仕上げてきたあたりに、歴史と活動に裏付けされたミュージシャンとしての確実なスキルを感じる。

　本人たちの生声楽器と打ち込み（もしかしたら生声をサンプリングしてるところもあるかも）が入り乱れるド派手なイントロも印象的な「SING!!!!!」でいきなりトップスピードにギアを入れた後は、ソウル、R&Bなど彼らのルーツであるブラックミュージックをメインストリートに、多様な道を走っていく。“坂”もあり、だ。途中で鮮やかにグループサウンズ（しかも洋邦、両方あり！）でコーナーを回ったかと思えば、次の角ではオールディーズのカバーにハンドルをきる。そして景色を変えるように、静かにアカペラが走り出した後、ロマンチックなポップ・バラードへ、滑らかに進んでいく。その滑らかさたるや、じつにお見事！

　バラードになってもダウンしない勢い・テンションは、彼らの現在のマインドがそのまま現れた証拠だろう。20周年を目の当たりにしてなお、前のめり気味のモチベーションが感じられ、そこが本作の作品性になっている。

　スキルを最大限に生かすことで、いい意味で賑やかな作品になった“ゴスペラーズの今”。

　20年前には想像できなかったゴスペラーズのネクストが、アニバーサリーイヤーの中、今、鮮やかに幕を上げる。

【文：伊藤亜希】