レビュー

布袋寅泰 | 2014.10.01

連載 第39週
布袋寅泰『New Beginnings』


『New Beginnings』で、布袋のピックが世界にヒビを入れる

 2年前に渡英した布袋が、ついに音楽作りへの欲望を解放した。日本のマーケットにこだわらず、だからといって海外にも媚びず、もっとも広い構えを取ったらこんな音楽が生まれたという感じ。リスナーに一切気を遣わずに繰り出される本気の音の凄さは、かえって爽快、妥協なし。妥協と言って悪ければ、今の布袋の心に鳴っている音を、彼はそのまま『New Beginnings』に賭けている。

 かつてロックにおいて、ギタリストはボーカル以上にカッコいい存在だった。布袋はソロになってから、ボーカリストとしてのポジションを確立した。ハンドマイクで歌う布袋に惚れたリスナーも多いだろう。その“日本語ボーカリスト布袋”にきっぱり別れを告げて、彼は『New Beginnings』を作った。

 ギタリストに戻ったわけではない。ギタリストの前人未到の可能性を信じて、新しいスタートを切ったのだ。そして布袋が発見した可能性とは、 “グルーヴ”だと感じた。速弾きやエフェクター・ワークで長々とソロを取るギター・ヒーローの時代があった。が、布袋の素晴らしさはリズムにある。彼はそれを武器に、世界を狙うのかもしれない。80年代にChicというバンドのナイル・ロジャースや、『ゴーストバスターズ』をヒットさせたレイ・パーカーJrが、ギターのカッティングで新しいタイプのヒーローになっ た。『New Beginnings』を聴く限り、「Kill or Kiss」 ではBOΦWYを彷彿 とさせるダンサブルなグルーブが、「Texas Groove」では軽快なブ ルースのグルーブが、そして「How the Cookie Crumbles」ではパンキッシュなグルーブがボーカルにフィーチャーしたイギ―・ポップの魅力をうまく引き出している。どのグルーブも、布袋のオリジナルだ。

 布袋という “グルーブ・マスター”が作り出す音楽が世界を席巻する。布袋の右手の指先に握られたピックが、世界のロックシーンにヒビを入れる日が、きっと来るに違いない。

【文:平山雄一】

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リリース情報

New Beginnings

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New Beginnings

発売日: 2014年10月01日

価格: ¥ 3,000(本体)+税

レーベル: ユニバーサル ミュージック

収録曲

1.Medusa
2.Walking Through the Night(Feat. Iggy Pop)
3.Kill or Kiss
4.New Chemical
5.How the Cookie Crumbles(Feat. Iggy Pop)
6.Barrel of My Own Gun
7.Sons of Sorrow
8.Texas Groove(Feat. Vula Malinga)
9.Into the Light
10.The Living
11.Departure
12.Trick Attack -Theme of Lupin The Third-

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