レビュー
Acid Black Cherry | 2015.02.25
前作『2012』のリリースから約3年弱。Acid Black Cherryのニューアルバム『L―エル―』がついに完成した。毎度、深いコンセプトを掲げてアルバムを作り上げてきたAcid Black Cherryだが、今回も壮大なテーマがある。世界への警鐘ともとれるグローバルな視点の前作と違い、今回は“個”に向き合った内容だ。タイトルの“L―エル―”は、ひとりの女性の名前であり、アルバムの主人公。つまり、“エル”という女性の人生を描いた作品となるわけだ。しかも、2013年以降にリリースされた全シングル(「Greed Greed Greed」「黒猫~Adult Black Cat~」「君がいない、あの日から…」「INCUBUS」)も、アルバムの中では、すんなり彼女の身に起こる物語になっている。これに関しては『2012』のリリース時、EMTG MUSICのインタビューでyasuが語った内容と符合する部分があるように思う。
「シングルもアルバムに入ったら、こういう見方ができる……そういうのが大事だと思うんです。言ってみれば、アルバムの曲が半分はネタバレしているわけじゃないですか。しかも、シングルとして買ってくれた人達もいるし。でも、それでアルバムの楽しみを半減させないために、CDを買ったら“あ、こういうことになってたのか!”って楽しんでもらいたくて」
シングル制作時から、じっくりとコンセプトが熟成されていたのではなく、全都道府県ツアーが終了した2014年6月末あたりからコンセプトを練ったのだという。2種類の初回限定仕様盤には、100ページにおよぶコンセプトストーリーブックがついているので、こちらを紐解けば、さらに作品の全貌が見えてくる。果たして“L―エル―”の人生は愛にあふれていたのか……細かいエピソードを含め、思わず引き込まれてしまう。練り上げたストーリーへのこだわりも、以前のインタビューで彼が語ったこととつながりそうだ。
「CDを買って盤を入れて、ポチッとスイッチを押して、歌詞カードを見ながら聴くってことを、僕の世代はずっとしてきましたから。そうあるべきとまでは言わないけど、そうあって欲しいとは思っていて」
さて、コンセプトの話に終始してしまったが、もちろん純粋にアルバムの曲を楽しむことも可能だ。ライブで盛り上がるハードでアグレッシヴな曲や、王道の美しいバラード、ジャジーで濃厚な楽曲まで、ファンの“聴きたい!”に応えたラインナップ。しかも、その収録曲の多くが、誰の人生にも寄り添えるということにも気づかされると思う。ひとりの女性の人生を紡いだ曲たちだが、実はどんな人の人生にも投影されていくのだ。それが、Acid Black Cherryの楽曲の魅力でもある。
4月からはアルバムを掲げたツアーもスタートする。既発のシングル曲など、すでにライブでもおなじみの楽曲もあるが、今回のツアーでは新鮮に響くのではないだろうか。もちろん、ライブで進化を遂げていくであろう新しい曲たちも、ライブでもぜひ楽しんでいただきたい。
【文:海江敦士】
リリース情報
L ―エル―(Project『Shangri-la』LIVE 盤)[CD+DVD]
発売日: 2015年02月25日
価格: ¥ 4,800(本体)+税
レーベル: motorod
収録曲
[CD]
1. Round & Round
2. liar or LIAR ?
3. エストエム
4. 君がいない、あの日から…
5. L ―エル―
6. Greed Greed Greed
7. 7 colors
8. ~Le Chat Noir~
9. 黒猫 ~Adult Black Cat~
10. versus G
11. 眠れぬ夜
12. INCUBUS
13. Loves
14. & you
[DVD]
Acid Black Cherry “Project『Shangri-la』” LIVE
Project『Shangri-la』Encore Season アリーナツアーより 日本武道館LIVE 映像 全17 曲を全曲完全収録!