レビュー

ねごと | 2015.03.04

連載 第60週
ねごと『VISION』


2重人格のねごとが提示する『VISION』には、ロックバンドのプライドが詰まっている



 大学を卒業後、音楽どっぷりライフに入って1年半が経ったねごとが、その成果を見事に叩き出した。

 その理由は、“セルフ・プロデュース”。ニューアルバム『VISION』の中盤の「コーラルブルー」は真っ直ぐな8ビートの曲で、4ピースのロックバンドとしてのプライドを感じる。次の「GREAT CITY KIDS」はねごとならではのキーボード・ロックで、これもまたバンドのアイデンティティが曲の中心にドンと据えられている。

 自分たちで自分たちをプロデュースすることは、かなり特殊な作業だ。一見、好きなことを勝手にやればいいように見えるが、それではプロデュースにならない。自分たちを一度客観的に眺めて、バンドをどう世の中に見せていくかを考えるのがプロデュースなのだ。

 その昔、デヴィッド・ボウイは、「自己演出こそ、ロックだ」と断言した。イギリスでは60年代までずっと、若者の音楽を大人が背後から操っていた。それに飽き飽きした者たちが、自分たちの手で自分たちのポップ・カルチャーを作ろうと始まったのがロックだった。自己演出、つまりセルフ・プロデュースがロックの原点なのだ。

 誰かに演出を委ねるのではなく、演出家と演奏家の2役を果たす。この“2重人格”こそ、スリルとダイナミズムを生む秘訣だ。だからバンドはキャリアを積むと、セルフ・プロデュースに移行していく。今では当たり前に行なわれていることだが、実は画期的な方法論だった。

 このアルバムでねごとは、曲作りやアレンジの方向性、歌詞の世界観を、自分たちで演出した。自分たちで書いた脚本の元、自分たちでその役割を演じている。自分たちのプロデュースを引き受けたことで、バンドの持つアピールポイントや、新たな可能性を発見することができた。

 アルバム最終盤の「Time machine」と「憧憬」には、その成果が見事に結集している。こんなマジックを起こせるなんて、バンドって素敵だなあ。

【文:平山雄一】

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リリース情報

VISION(初回生産限定盤)[CD+DVD]

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VISION(初回生産限定盤)[CD+DVD]

発売日: 2015年03月04日

価格: ¥ 3,700(本体)+税

レーベル: Ki/oon Music

収録曲

[CD]
1. 未来航路
2. 黄昏のラプソディ
3. endless
4. エイリアンエステート
5. シンクロマニカ
6. コーラルブルー
7. GREAT CITY KIDS
8. 透明な魚
9. 真夜中のアンセム
10. ドリーミードライバー
11. アンモナイト!
12. Time machine
13. 憧憬

[DVD]
「ねごと presents お口ポカーン!!“Z”OOM in Z day」
LIVE at EX THEATER ROPPONGI(11曲収録)

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