レビュー
吉井和哉 | 2015.03.19
イエロー・モンキーが初期に在席したレーベルTRIADに移籍したことは、吉井和哉にとってどんな意味があるのだろう。ソロ・アーティストとなって15年、当初は過去の亡霊と闘うように新たな自分を示して来た彼だが、4年ぶりのソロ7作目になる本作は、この4年に反芻して来た自身の過去を飲み込んだ上で踏み出した、新たな一歩を提示しているように思える。「~此レガ原点!!~」とサブ・タイトルがついた、ほんの4ヶ月前の前作「ヨシー・ファンクJr.」は、過去の名曲を彼ならではのサウンドと歌で解釈した名作だ。その10ヶ月前には、ソロ活動を総括するベスト盤『18』をリリースしている。この2作を経て冒頭に書いたように彼は、過去を飲み込んだ快作とも言うべき『STARLIGHT』を完成させた。
真っ向から星に突き進むような痛快さと大地から飛び出す力強さをもった詞・曲を、彼の信念とも言うべき骨太なロックが彩って行く。カリフォルニアのスタジオで録音したサウンドは逞しくも軽やかで、ぐいぐい身体を揺らし聴くほどに虜になる。ローリング・ストーンズへのオマージュも感じさせるドラマチッくな幕開けの「Hattrick’n」で歌う“あるのは希望がぶち込むハットトリック”とは、光に向かって前進あるのみという宣言だろうか。続くのはMVが公開された「(Everybody is)Like a Starlight」。閉じた過去から抜け出し“あの丘にもう1回”と進む。“白いブルーズ呑み込んで 黒いバラッド吐き出して”という歌詞は、この作品がブルースやソウル・ミュージックのモチーフが散りばめられている事を示唆しているように思える。ダイナミックなギター・リフで始まる「You Can Believe」はタイトル通り信じることをファンタスティックに歌い、「紅くて咲こうとした恋の」はエロティックに歌うバラードだ。「TOKYO NORTH SIDE」では“光を浴びる覚悟はできた”と決意表明し、スティー・ヴィー・ワンダーへの敬愛をタイトルにも込めた「迷信トゥゲザー」は迷信を振り払いながら“過去は過去なのよ”と言い切っている。ここまで来れば引き返す事は出来ない。「Route69」とはロック道。楽な道ではないけれど、彼が選び進んでいるのはこの道なのだ。そして「Step Up Rock」とジャンプして、「STRONGER」は“だから僕を見て”とジョン・レノンばりに呼びかける。先行シングルとして、昨年暮れの武道館公演で披露された「クリア」が最後を飾るが、進むほどにグルーヴィな厚みを増して行くコーラスが圧巻。歌詞の中に“イエロー”“モンキー”とさりげなく歌い込んでいるのは、これも自分の一部であり、それを組み込んだ現在から続く未来を見据えているという事ではなかろうか。
聴くたびに発見があり深読みすればいくらでも出来るのは言うまでもないが、そんなことをしなくても何度でも聴く価値のある作品であるのは言うまでもない。吉井和哉にしか表現出来ないグラマラスで繊細で、なおかつパワフルでポジティヴな新作なのだから。【文:今井智子】
リリース情報
STARLIGHT(初回限定盤)[CD+DVD]
発売日: 2015年03月18日
価格: ¥ 3,800(本体)+税
レーベル: 日本コロムビア
収録曲
[CD]
01.Hattrick’n
02.(Everybody is)Like a Starlight
03.You Can Believe
04.紅くて咲こうとした恋の
05.TOKYO NORTH SIDE
06.迷信トゥゲザー
07.Route69
08.Step Up Rock
09.STRONGER
10.クリア
[DVD]
2014/12/28 Sun. NIPPON BUDOKAN
YOSHII KAZUYA SUPER LIVE 2014 ~此コガ原点!!~
01.WEEKENDER
02.VS
03.シュレッダー
04.MUSIC
05.点描のしくみ
06.ビルマニア
07.襟裳岬
08.アバンギャルドで行こうよ
09.SUCK OF LIFE
10.FINAL COUNTDOWN
11.クリア
12.ボンボヤージ