レビュー
DJみそしるとMCごはん | 2015.04.15
DJみそしるとMCごはん
『ジャスタジスイ』
母の味から自炊へと進化する、DJみそしるとMCごはんのメジャー・アルバム
のほほんラッパーのDJみそしる&MCごはんが、ついに!まさか!!のフルアルバムをリリースだ。
タイトルはズバリ『ジャスタジスイ』。インディーズ・デビューが『Mother’s Food』(母の料理)だったから、自炊へ進化(笑)したわけだ。そして期待通り、全編が自炊レシピという直球な内容。けっこう複雑な料理もあって、ラッパーとしても料理家としても、腕の見せ所が満載だ。
これまでヒップホップは、実にさまざまなジャンルを呑み込んできた。というより、ストリート・カルチャーから生まれた表現スタイルだけに、ストリートにあるものはすべて素材になる。その意味からすれば、凝ったフランス料理や格式高い和食ではなく、“自炊”はまさにストリート料理。お金がなくて、でも食べることを楽しみたい若い世代は、自然と自炊に向かう。ジャンクといってしまえばそれまでだが、このレシピ・アルバムはなかなか使えるのだ。
簡単にできちゃう「缶詰ロワイヤル」、味が想像できない「凍狂まんじゅう」、僕がいちばん興味を惹かれたのは、炊き込み式チャーハンの「あんかけ炊炒飯」。うまそう!
そして、記憶に残る味覚を賛美する「あの素晴らしい味をもう一度」がベストトラック。この曲は70年代を代表する名曲「あの素晴らしい愛をもう一度」のパロディなのだが、スチャダラパーのSHINCOが制作したトラックが秀逸。音楽愛と食べ物愛が両立して、名曲のメロディを基にした立派な“自炊アンセム”になっている。
クックパッドをスマホで表示して作るのもいいが、ヘッドセットしてこのアルバムを聴きながら料理するのも、また楽しそう。いっそストリート・クッカーが集まる“自炊クラブ”とか、世田谷あたりにオープンしないかなあ。
さて、君の作りたい料理は「何曲目?」ってな具合にね。ヨダレが出ちゃうアルバムだ。
【文:平山雄一】