レビュー
チャットモンチー | 2015.05.14
チャットモンチー『共鳴』
チャットモンチーの二人の共鳴に、共鳴した
ミュージシャンが集結した奇跡のアルバム
ロックバンドの最低限の編成“トリオ”から一人が脱退したとき、チャットモンチーはどうなるのだろうと心配していたら、まったくの大きなお世話だった。橋本絵莉子と福岡晃子は、二人で再出発し、瞬時も歩みを止めることなく、“前進”を続けた。そうして行き着いたのが、この『共鳴』である。
『共鳴』では、二人だけ、そこに男子二人が加わった“男陣”、女子二人が加わった“乙女団”、さらには男子一人が加わったトリオと、四つのスタイルで音楽作りをしている。これはかなり異例の事態だ。しかしどれもが過不足のない音楽を作り出していて、アルバム全体としてまったく違和感がない。それどころか、かえって統一感がにじみ出て、「これぞチャットモンチーのアルバムだ!」と言える出来映えになっている。
それは橋本と福岡が「自分たちの作る音楽」をはっきり認識 していて、一切の妥協を許さない姿勢から来ている。二人になったとき、安易にサポートを入れず、二人で何ができるのか、徹底的に追求した。ライブまで二人でやってのけた。二人でできることの限界と可能性を体感したからこそ、必要な音を求めて他のミュージシャンの力を適切に借りることができたのだ。それこそ、二人が共鳴し、そこに共鳴するミュージシャンたちが集まっってきたという訳だ。その上で、人間と生活、女性という属性のすべてを音楽を通して描き出そうという意志が生まれた。
男陣による「きみがその気なら」は、真っ直ぐに生きる力は自分の中にあると歌う。乙女団による「最後の果実」は、たおやかな女性の未来を描いて美しい。そしてシングルとして先行して発表されていた「いたちごっこ」が、このアルバムの中心になっていると僕は感じた。
初のフルアルバム『耳鳴り』に入っていた「東京ハチミツオーケストラ」以来、ずっと描き続けてきた“東京”に象徴される音楽と人生の関わりを、現時点で意見表明している。二人の覚悟は、深まっている。だからこそ、アルバム・ラストの「ドライブ」は二人でレコーディングされ、迷うことなく突き進む決意を宣言する。
バンドの危機を乗り越え、ここまで行き着いた奇跡を、“自由”と呼ぶ。チャットモンチーは、自らの力で、その自由を手に入れた。11月の7年ぶりの武道館が、今から楽しみだ。
【文:平山雄一】