レビュー

キマグレン | 2015.07.02

連載 第77週
キマグレン
『LAST SUMMER DAYS
~きまぐれBEST~』


キマグレンの“海から眺めたJ-POP”は、たくさんの可能性を僕らに見せてくれた

 10年前に逗子海岸から始まったキマグレンは、何から何までユニークなユニットだった。

 第一のユニークさは、最初に自分たちのライブハウスを立ち上げたこと。自らプレイするだけではなく、自分たちが見たいアーティストを招いて地元の音楽ファンに楽しんでもらうことも、キマグレンの重要な活動の一つだった。実際、「音霊 OTODAMA SEA STUDIO」 はオープン以来、順調に認知度を伸ばしていき、やがて全国に名を知られるライブハウスになっていく。

 そのライブハウスを起点として、キマグレンは逗子のライフスタイルを反映した新しいJ-POPを創出し、全国に発信していった。このこともユニットのユニークさを印象付けた。彼らのグルーヴを重視したアコースティック・サウンドは、都会的でもあり、アーシーでもある。リリックもおおらかなメッセージを含んでいて、独特のニュアンスが魅力的だった。

 彼らのユニークさの核心は、すべてが東京中心に回ってきた音楽シーンに対して、「それがすべてではないでしょ?」と別の角度からアプローチしたことだった。たとえば、インターネット配信の整備などで地元にいながら全国を視野に入れた活動が可能になったことを、キマグレンは身を持って示した。

 解散を発表して、ラストアルバムとなるこの『LAST SUMMER DAYS~きまぐれBEST~』 を聴くと、彼らの音楽が“東京中心”ではなかったことがはっきりわかる。トレンドに左右される都会型のポップではなく、かといってトレンドに背を向けた古めかしさもない。海を通して感じるワールドワイドな感覚と、逗子に息づくアーシーな人生観をうまくミックスして作り上げた“キマグレン・サウンド”は唯一無二だ。

 個人的には、彼らのバンドとしてのライブを初めて観た京都が印象に残っている。ブラジリアン・スタイルとジャック・ジョンソン・タイプの2人のギタリストを擁するバンドは、“洗練された生命力”があって、キマグレンのコンセプトを見事に音楽化していて感動的だった。

 活動の座標を少しずらすだけで、既成のJ-POPとはまったく違う音楽を作り出すことができる。そんな可能性を堂々と提示してくれたキマグレンに、改めて敬意を表したい。

【文:平山雄一】

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リリース情報

LAST SUMMER DAYS ~きまぐれBEST~(初回限定盤)[2CD+DVD]

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LAST SUMMER DAYS ~きまぐれBEST~(初回限定盤)[2CD+DVD]

発売日: 2015年07月01日

価格: ¥ 4,800(本体)+税

レーベル: ユニバーサル シグマ

収録曲

[CD]
1. LIFE (Last Summer ver.)
2. 恋がよんでる
3. BEACH BOYZ
4. DEAR
5. ガンバレロボ 2015
6. 約束の丘
7. 恋熱
8. まるで海だね
9. 月光浴
10. 真夏の夜のシンデレラ
11. 夏が終わる頃
12. バケット・リスト
13. 君を忘れない

[初回限定盤 ボーナスDISC 収録曲]
(シングル・コンプリート・ベスト!!)
1. あえないウタ
2. LIFE
3. 愛NEED
4. 天国の郵便ポスト
5. 君のいない世界
6. SMILE
7. リメンバー
8. IT’S MY 勇気
9. 蛍灯
10. バトン
11. 歩
12. 最後の夏

[初回限定盤DVD収録Music Video]
●あえないウタ
●LIFE
●愛 NEED
●天国の郵便ポスト
●君のいない世界
●SMILE
●リメンバー
●青い季節
●星空モード
●IT’S MY 勇気
●蛍灯
●バトン
●歩
●あいまいな関係 / きっかレン (キマグレン+吉川友)
●最後の夏
●ファイト!
●LIFE (Last Summer ver.)

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