レビュー
HY | 2015.07.21
バンド結成から15年という5人の“人生”の道のりであり、活動拠点を本格的に地元・沖縄に移したことにより、いっそうリアルな説得力を持って描き奏でられる彼らの“生活”そのものでもあり、けれども“生命”と訳すのがこの作品にはもっともしっくりくる気がした。
通算11枚目にして前作『LOVER』からわずか7ヵ月あまりでリリースされたHYのニューアルバム『LIFE』。意外にも彼らがこの季節にリリースをするのは3rdアルバム『TRUNK』以来、実に11年ぶり(!)だというが、“夏”“海”“沖縄”をテーマに編まれた全11曲(うち「ハレル」は初回限定盤収録のボーナストラック)はバラエティに富みながらどの曲にも燦々と降り注ぐ真夏の陽射しのごとき真っ直ぐな生命力が宿っている。
例えば、アッパーに幕開ける「my friend」に込められたかけがえのない“「ありがとう」”。例えば、別れをモチーフにしながらもしっかりと前を向いた「Be Happy!!」の躍動感には寂しさ悲しさも噛み締めたからこその晴れやかさが、今作イチ、ハードエッジなロックナンバー「キヅイタ」には弱さを受け止めてなお“何度だってやり直せる”“もっと自分を信じていい”“その全てが正解だぜ”と聴く者の背中を力強く押す確かさがある。心が疲れて立ち上がれないとき、笑えなくて癒されたいとき、そんなときこそ沖縄だ! と陽気に誘う「夏だ!!! パーティー」、その全開かつ絶対的な地元愛は痛快で、彼らのルーツの揺るぎなさがなんともうれしい。
ハイテンションで明るいムードに溢れた作品ではありつつも、その実、重要な軸となっているのはアルバムの中盤を支える2曲、「風になって花になって」「愛しあって許しあって」ではないか。前者は誰よりも大切で特別な“君”に捧げる普遍の愛情を朗々と歌い上げたスケールの大きいミディアムナンバー、後者は真摯に愛と向かい合い、そのあり方を問いかけるラブソングの枠をも越える壮大なバラードだ。どちらにも通底するのは生命に馳せた想い。それを小難しくこねくり回すことなく、ストレートに聴き手へと伝え届ける率直な姿勢こそがHYというバンドの持つすごみなのだと思う。
ラストの「スマイル」はぜひ歌詞カードを読みながら聴いてもらいたい。新里英之がこの曲に託したメッセージが言葉そのものだけでなく、行間からも力強く立ちのぼってくるのを感じられるはずだ。そして、それは必ずやあなたの生命にもエネルギーを吹き込んでくれる。何かと消耗しがちな季節だけれど、HYの『LIFE』はあなたの夏をめいっぱい潤してくれるに違いない。
【文:本間夕子】