レビュー
Kalafina | 2015.09.15
日本だけでなく、今や世界各国から熱い注目を集める女性3人組ボーカルユニット・Kalafina。彼女たちが5枚目となるアルバム「far on the water」をリリースした。
まず耳に飛び込んでくるのは、透明な“水”の中へと誘い込まれるような1曲目「into the water」。奥深い自然に身を浸すようなヒーリング的ミュージックと純度の高いボーカルによって、いざこのアルバムへ飛び込む準備が完了する。2曲目以降は、一言ではジャンルを括れない、実にKalafinaらしい多彩な音楽旅行がスタート。ストリングスを配したドラマティックなメロディーと切ない歌詞に胸が締め付けられる「五月の魔法」、スリリングな民族調アレンジが印象的な「うすむらさき」、ハードなロックサウンドとアグレッシブなボーカルが光る「identify」と、前半だけでも驚くべき音楽的ふり幅でリスナーの耳を刺激していく。
アルバム後半も、躍動的なテンポ感に体が乗るアップチューン「むすんでひらく」、和の情緒に酔いしれる「空色の椅子」など、Kalafinaの新たな音楽の引き出しはまだまだ開く。中でも、儚くも力強い弦楽器に耳を奪われる「灯影」は全体のアクセントに。キーの異なる3人の歌声がひとつ折り重なったボーカルが絶品で、自然と涙がこぼれるくらい切ない、けれど、踏みしめた足から徐々に力が湧いてくるような不思議なパワーを秘めた1曲となっている。そして、さまざまなKalafinaワールドを余すことなく堪能した先に行き着くのが、アルバムの最後を飾るタイトルチューン「far on the water」。NHK「歴史秘話ヒストリア」エンディングテーマのために書き下ろされたこの曲は、3人の温かく流麗に広がるハーモニーが圧巻。ポジティブな空気感をまとった美しいメロディーも、アルバム全体を包み込むような壮大さがある。そして後半の歌詞の一節《この波の向こうへ 僕らの舟は行く》は、まだまだ続いていくKalafinaのストーリーが暗示されているようでも。この先に彼女たちが見せてくれる新たな世界が、早くも楽しみになった。
国内外を魅了するハイクオリティな音楽を、まるで水の中に潜ったかのように集中して聴かせる今作。さまざまな景色を経由し、堪能して、再び地上に戻った時には、心が浄化されたような清々しい爽快感に満ちていることだろう。Kalafinaの世界観にどっぷり浸ることで味わえるその感覚を、一度ぜひ体験してみてほしい。
【文:川倉由起子】
リリース情報
far on the water(初回生産限定盤A)[CD+DVD]
発売日: 2015年09月16日
価格: ¥ 3,611(本体)+税
レーベル: SME Records
収録曲
[CD]
1. into the water
2. monochrome
3. 五月の魔法
4. ring your bell
5. うすむらさき
6. identify
7. 灯影
8. One Light
9. むすんでひらく
10. heavenly blue
11. 空色の椅子
12. believe
13. far on the water
[DVD]
1. heavenly blue Music Video
2. far on the water Music Video
3. ring your bell ~2015.2.28 at 日本武道館~
4. far on the water ~2015.3.1 at 日本武道館~