レビュー
スガ シカオ | 2016.01.13
スガ シカオ『THE LAST』
『THE LAST』には、リスナーを真実の闇へと誘う、リアルな愛がある
「いきなり本当のことを言われても、困る」と思っている人は、このアルバムを聴かない方がいい。
スガ シカオのニューアルバム『THE LAST』は、赤裸々な歌だらけ。スガはこれを“2度目のメジャーデビューアルバム”と位置付け、「1度目もそうだったけど、デビューの前だけに存在する、瞬間で消えてしまう閃光のようなキラメキと衝撃。この真空パッケージを、たくさんの人に体感してほしい」と語る。しかし、レアでピュアなスガの告白を正面から受けとめることのできるリスナーは、そう多くはないだろう。だが、スガは1度目のメジャーデビューのときも、その鋭すぎる歌詞と音楽性でヒットを危ぶまれたが、見事にブレイクスルーを果たした。
『THE LAST』の1曲目「ふるえる手」は♪いつもふるえていた アル中の父さんの手♪ と始まる。昨年末、行なわれた“生ライブ試聴会”でもこの曲がオープニングだったのだが、その時はあまりに鋭利なこの歌詞に、オーディエンスがツバキを飲む音が聞こえそうなくらいの緊張感が走ったものだった。
露悪趣味ではない。スガは次に進むために向かい合わなくてはいけないものを、よく知っている。これからの自分を支えてくれる人たちに、「僕はこういう者です」というフェアな自己紹介をしているだけだ。スガはそれを「デビューの前だけに存在する、瞬間で消えてしまう閃光のようなキラメキと衝撃」と呼んだ。言い換えれば、これから深い繋がりを持とうとする人間に対して、“2度目の初対面”の時にこそ言わなければならないスガ流の挨拶なのだ。
8曲目の「オバケエントツ」でスガは、♪ひとつだけ確かなコト 君を思う気持ち~ほんの少し先の闇へ 君と歩いていきたい♪と歌う。これは、相手を闇へと誘(いざな)うラブソングだ。こんな大胆不敵なラブソングは、スガにしか書けない。ただ“I LOVE YOU”としか言わない薄っぺらなラブソングが氾濫する今だからこそ、スガはリスナーを闇へと誘う。ここにスガの真実の思いがある。
だからこそ「いきなり本当のことを言われても、困る」と思っている人に、このアルバムを聴いて欲しいと思う。
【文:平山雄一】
リリース情報
THE LAST(初回限定盤)[CD(通常盤)+SPECIAL CD「THE BEST」]
発売日: 2016年01月20日
価格: ¥ 3,800(本体)+税
レーベル: ビクターエンタテインメント
収録曲
<収録曲>
01.ふるえる手
02.大晦日の宇宙船
03.あなたひとりだけ 幸せになることは 許されないのよ
04.海賊と黒い海
05.おれ、やっぱ月に帰るわ
06.ごめんねセンチメンタル
07.青春のホルマリン漬け
08.オバケエントツ
09.愛と幻想のレスポール
10.真夜中の虹
11.アストライド
<SPECIAL CD『THE BEST』>
01.Re:you
02.傷口
03.Festival
04.アイタイ
05.したくてたまらない
06.赤い実
07.赤い実 Remix
08.情熱と人生の間
09.航空灯
10.LIFE
11.モノラルセカイ
※全曲リマスタリング