レビュー
LILI LIMIT | 2016.01.20
男女混成5人組バンド、LILI LIMIT(リリリミット)。2012年に山口で結成された。地元、山口や福岡など西日本を中心に活動を展開していたが、その後、メンバー全員で上京。もちろん、自分たちの音楽を貫くためだ。
そんな彼らのセカンドアルバム『#apieceofcake』が完成した。
昨年夏に発売されたファースト・アルバム『Etudes』から、その音楽性は折り紙つきだったが、びっくりするぐらいハイクオリティーな新作を仕上げてきた。音源の緻密さや構築具合は、サウンドアートというより、サウンドコーディネイトと言えるだろうか。ボーカルやコーラスまで含んだすべての一音が、在るべき場所に在るという感じ。パッションも遊び心もあるが、ポップ・チューンとして配置が考えられているといった印象だ。
成長か進化か。否、変態、と称した方がぴったりかもしれない――それは、さなぎが蝶になるかの如く。いや、アヒルが白鳥に、かな。
ま、それはどっちでもいいんだけど。
新作『#apieceofcake』の最大の魅力は、すごくバンドらしいところ。オーガニック・エレクトロニカ(というかアンビエント?)や、ポストパンクNWなど、自在にバンドという枠を飛び出しながらも、どの曲もバンドサウンドそのものだ。一音一音がくっきりしてきて、サウンドそのものがソリッドになったのもそう感じる一因だが、空間を作り出すための差し引きが段違いに上手くなったのが最大の理由だろう。余白がはっきり耳に残るようになった分、全体のグルーヴが前面に出てきた。だから、どれだけ緻密でも、どれだけ打ち込みを使っていても、とても生々しいし余白がある。だからこそ、すごくバンドらしいアルバムになった。このLILI LIMITならではのバンドらしさは、彼らが目指していた“サウンド=空間”という手法を明確にしたと思う。じつに豊富な曲調ながら、作品全体を通して、同じグルーヴを感じるのはそのおかげだろう。
歌詞の変化にも注目だ。元々、海外の読み物を和訳したような趣が大きな特徴だったと思うが、そこにストレートで感情的な“日本語らしい日本語”が加わった。大事なメロにのる部分に、強烈な日本語(正直に言えば、ちょっとエグい)を持ってきているあたりも、様々な経験を経た進化と言えるだろう。ストーリーをぼかし、聴き手に余白を持たせるところは相変わらずだが、その余白がサウンドとしっかりリンクするようになってきた。
2016年は始まったばかり。LILI LIMITは、必ず、もっと音楽リスナーを楽しませてくれるはずだ。
さぁ、シーンのど真ん中を貫いていけ!
【文:伊藤亜希】