レビュー

コブクロ | 2016.02.10

 コブクロの最近のシングル・タイトルというと、「奇跡」や「未来」など、普段、格別意識せずに使っている言葉に“新たな意味”を感じ取るという、そんな姿勢も見られたが、今回は英語の慣用表現である“SNIFF OUT”が曲のタイトルに選ばれた。意味は「嗅ぎ分ける」、「探り出す」、といったところ。これは本作が、ドラマ『警視庁ゼロ係~生活安全課なんでも相談室~』の主題歌であることとも関係ある。

 彼らが発表したコメントを参考に書くと、つまり難事件を解決していくドラマの主人公に着目すれば、その視線の先には「真実」と「嘘」があり、それを見極める「鍵」こそが重要となる。その時、ふと浮かんだ「鍵 開ける」という言葉からの連想で、「嗅ぎ分ける」(=“SNIFF OUT")に辿り着いたのだそう。作詞作曲は小渕健太郎だが、おそらく小渕は、制作過程で黒田俊介にボ?ルを投げ、意見を聞きつつ作品を完成に導いたのだろう。

 アンプ・テンポの作品で、歌詞も叙情的というより反射神経で言葉を紡いだスピーディーさが信条である。さきほどの連想、「鍵開ける」→「嗅ぎ分ける」も歌詞のなかに出てくる。ただ、アップといっても今回の場合、早めのフォービートっぽいというか二拍子っぽいというか、そんなニュアンスも醸し出すリズム・アレンジとなっている。そう。そのあたりが新鮮なグルーヴを生んでいる。

 しかもイントロのスタッカートの効いたリフが風雲急を告げるかのように曲の加速を促し、こうした感覚のアレンジのものの古典を繙くなら、ウイングスが「007死ぬのは奴らだ」でやったアイディアをちょっと彷彿させもする。

 そしてぜひ書きたいのが二人のボーカルである。この曲の場合、小渕が先発で歌い始められる構成だけど、黒田が加わりツインになった時に伝わってくる質感としては、実にライヴ感覚、なのだ。二人が歌いながら目配せしている図が浮かぶ。

 彼らの場合、声がバームクーヘンのように精緻に重なり合うスタイルというのも得意だけど、今回の場合、まるでバンスに挟まれた二枚の厚切りハムのような、そんな個々の自己主張でこちらの耳に届く。間奏にはたっぷりギター・ソロのパートも用意されていて、まさにステージが楽しみな仕上がりでもある。

 明らかにこれは、ネクストのコブクロ像を想起させる作品だ。ドラマとの関連ももちろん押えておくべきだけど、次のコブクロの目指す音楽性をも「探り出す」(=“SNIFF OUT”)ことになったのが、この作品と言えるだろう。

【文:小貫信昭】

リリース情報

SNIFF OUT !(配信限定)

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SNIFF OUT !(配信限定)

発売日: 2016年02月10日

価格: ¥ 250(本体)+税

レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン

収録曲

1. SNIFF OUT !

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