生まれて初めて映画館へ来た君へ。君はそこで綺麗な歌を聴いた。それを全身に浴びた。君は映画だけじゃなくて、音楽というものも体験したんだよ。

　奄美大島在住の２人組ユニット、カサリンチュが2月24日にミニアルバム『たいせつなひと』をリリースした。

　表題曲のバラード「たいせつなひと」は映画『しまじろうと えほんのくに』のテーマ曲。この映画は映画館デビューする子供たちに向けて作られている。「たいせつな人」もまた、言葉や音やメロディに細心の注意を払った。初めて音楽を体験する子供たちに良質な音楽を届けるためだ。

　カサリンチュからの贈り物はそれだけではない。大切な人とはただ優しいだけの存在ではないこと。本当は少し切ない歌かもしれないこと。そういった秘密を、子供たちは大人になってから知るはずだ。

　さらに、言葉遊びや音の面白さにこだわった「僕の正解」や、犬の目線で泣かせる「おばあちゃんのことが大好きな犬の話」などで、音楽の楽しさや奥深さも知ることになる。そうやって長い長い時間をかけてつながっていく『たいせつなひと』。子供たちだけではなく、かつて子供だった人たちにとっても、この出会いは色あせない光る宝物となるだろう。

【文：柳村睦子】