レビュー
井上苑子 | 2016.03.14
小学校5年生の時に路上で歌い始め、小学校の卒業式当日に心斎橋クアトロで史上最年少でのワンマンライブを実施。中学生でインディーズデビューを果たし、映画や舞台にも出演。高校進学と同時に上京し、BiSを手がけた松隈ケンタのプロデュースで本格的な音楽活動をスタートさせた井上苑子。メロコアやエモ、ハードロックなどのバンドサウンドにチャレンジしながら、自分にあったジャンルを模索した時期を経て、14年7月にリリースしたインディーズからの1stミニアルバム「線香花火」で、現在につながるポップな魅力が開花。同じ頃に始めたツイキャスがきっかけとなり、15年7月にミニアルバム『#17』でメジャーデビューを果たした彼女。前置きが長くなってしまったが、デビュー当時、17歳にして、すでに7年間のキャリアを積んでいるシンガーソングライターであるということを記しておきたい。
そして、メジャーデビューから半年間でのSNSでの広がりには、社会現象と言えるくらいの勢いがあった。デビューミニアルバムのリード曲「大切な君へ」は女子高生から絶大な人気をほこる動画投稿アプリ<MixChannel>の双子ダンスへの投稿が相次ぎ、続く1stシングル「だいすき。」はカップル動画のBGMとして使用するカップルが続出。仲良しカップルの動画を見て、キュンキュンしたり、癒されるというのは、現代の女子中高生ならではだが、井上自身も日常的に閲覧している動画サービスだからこそ、自然発生的に口コミで広がっていったのだろう。やがて、“女子高生人気ナンバー1”や“ツイキャスの女王”と評されるようになり、荒井由実~ジュデイマリ~aiko~西野カナ~miwaと連なる“女心の代弁者”的ポジションを獲得した彼女が、高校生最後の卒業アルバムとなる1stフルアルバム『Hello』を完成させた。
恋愛ソングに聞こえるほど好き過ぎる友達への気持ちを歌った「大切な君へ」。口に出しては言えない甘い妄想が加速するラブソング「だいすき。」。この春に高校を卒業する自身の心情を描いた「君に出会えてよかった」。仲良しの男友達と親友の女の子の恋を応援する切ない心模様を綴った「赤いマフラー」……。Jazzin’parkの久保田真吾や元SUPER BEAVERの柳沢亮太らが手がけるカラフルでポップなサウンドの中に込められたのは、等身大で、リアルで、身近な思い。まだ見ぬ真実の愛に憧れてたり、言えない片思いを抱えていたり、友達との別れに寂しさを感じたり……。学生生活が終わり、社会に出ていく直前の中ぶらりんな時期。本格的な人生のいろいろに思い悩みながらも、ちゃんと前を向いて、未来に向かって歩んでいこうとしている。瑞々しさの真っ只中にいる彼女が歌う曲が瑞々しくないわけがない。同世代であれば共感するだろうし、人生に一度しかない思春期という眩しい季節が過ぎ去ってしまった人には、忘れていた何か??胸をぎゅっとつかまれるような切なさや甘酸っぱい思い出、あわあわとしたあの頃の気落ちを運んでくれるような作品となっている。
【文:永堀アツオ】
リリース情報
Hello(数量限定デラックス盤)
発売日: 2016年03月16日
価格: ¥ 3,611(本体)+税
レーベル: ユニバーサル ミュージック
収録曲
1.大切な君へ
2.線香花火
3.「君に出会えてよかった」
4.おんなのこ
5.ふたり
6.だいすき。
7.Walk Through Again
8.赤いマフラー
9.サヨナラバイバイ
10.雪
11.右足
12.グッデイ (Hello ver.)
13.Say My Name(ボーナストラック)
≪豪華4大封入特典≫
・井上苑子 × WEGO "オリジナル Hello ポーチ"
・オリジナルICカード用ステッカー
・ボーナストラックとしてライブ定番曲「Say My Name」を収録。
・応募抽選特典:100名様に"井上苑子から直筆お手紙が届く!" 応募用紙封入