レビュー

ゴスペラーズ | 2016.03.23

連載 第114週
ゴスペラーズ
『THE GOSPELLERS G20 ANNIVERSARY “LIVE ARCHIVES” Blu-ray BOX+Special Disc』


J-POPに新たなジャンルを確立した、勇気ある
ゴスペラーズの軌跡


 シングル「SING!!!!!」から始まったゴスペラーズ20周年プロジェクトの最後を飾るのは、これまでの数々のライヴの中から厳選された映像を収録した6枚組Blu-ray BOX“LIVE ARCHIVES”だ。初のBlu-ray化作品や未発表曲も入っている。

 ゴスペラーズは、J-POP史上、とても特異な存在だ。ヴォーカリスト5人というグループはそれまでもあったが、ほとんどは一人のリードヴォーカルとコーラス要員という構成だった。対してゴスペラーズは、全員がリードを取る。さらにはリードを交代で歌う“歌い継ぎ”もやってのける。これは日本の音楽シーンにおいて極めて珍しい音楽スタイルだったので、このグループの歴史の初期はそうした自分たちの成り立ちをアピールすることに費やされた。その際、ライヴはとても有効な手段だった。だから今回のライヴ映像がまとめてリリースされるのは、アニバーサリーにふさわしいアクションと言えるだろう。

 ゴスペラーズは非常に多くのライヴ・スタイルを持っている。通常のバンドをバックにしたライヴ、DJと5人でのライヴ、5人だけのアカペラ・ライヴ、そして演劇とアカペラを組み合わせたオリジナルなライヴ。これだけ様々な見せ方を持っているグループは、他にいない。しかしそれは彼らが“ヴォーカルグループ”の魅力を必死で伝えようとした結果でもあった。

 特に演劇と結びついた“シアトリカルライヴ”は、ヴォーカルグループへの理解を助ける啓蒙的色彩が強かった。もちろんメンバーに役者の経験はない。が、彼らは劇中で、アメリカで生まれたアカペラ“ドゥワップ”の発生を実演して見せたりしていた。僕はこのシリーズ・ライヴを最初から見て来たが、メンバーたちの努力は彼らの思惑以上に報われていると思う。

 ヴォー カルグループを知って欲しいというメンバーの熱意がオーディエンスに届き、そこで懸命に歌う5人に、ヴォーカルグループとしてではなく、ゴスペラーズそのものに感動するという嬉しい誤算が起こった。オーディエンスたちは、アカペラの歴史を学びに来ていたのではなく、ゴスペラーズならではのエンターテインメントを楽しみに来ていたのだった。僕はそれが皮肉な出来事とは思わない。結果、オーディエンスに伝わったのは、ゴスペラーズの魅力だったからだ。また「星屑の街」などの名曲がシアトリカルライヴから生まれたことも、ゴスペラーズの特異な成り立ちがアドバンテージになっている。

 今回のボックスセットには、初期のシアトリカルライヴの“アカペラ人”(99年)、シアトリカルライヴの完成形である“アカペラ港”が収められている。同時に、バンドスタイルの現時点での最高峰“FOR FIVEツアー”も収められている。

 ゴスぺラーズは20年をかけて、ヴォーカルグループの魅力を証明してきた。もちろん彼らのスタジオワークも素晴らしいが、オーディエンスと一緒にヴォーカルグループを日本に定着させた軌跡を、このBlu-rayで追体験してみるのもいいだろう。それはJ-POPに新たなジャンルを確立した勇気あるグループの、真摯な挑戦の歴史でもあるのだ。

【文:平山雄一】

tag一覧 DVD 男性ボーカル ゴスペラーズ

リリース情報

[Blu-ray] THE GOSPELLERS G20 ANNIVERSARY “LIVE ARCHIVES” Blu-ray BOX+Special Disc

[Blu-ray] THE GOSPELLERS G20 ANNIVERSARY “LIVE ARCHIVES” Blu-ray BOX+Special Disc

発売日: 2016年03月30日

価格: ¥ 20,000(本体)+税

レーベル: Ki/oon Music

収録曲

【完全生産限定盤】
【Disc1】「さかあがり。」※初Blu-ray化
【Disc2】「ゴスペラーズ坂ツアー2003“アカペラ港”」 ※初Blu-ray化
【Disc3】「ゴスペラーズ坂ツアー2005“G10”」 ※初Blu-ray化
【Disc4】「ゴスペラーズ坂ツアー2009“15周年漂流記 秋冬”」
【Disc5】「ゴスペラーズ坂ツアー2012?2013“FOR FIVE ”」
【Disc6】「Special Disc~ゴスペラーズ坂ツアー1999“アカペラ人”・ゴスペラーズ坂ツアー2001“アカペラ街”ダイジェスト~」 ※初商品化

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