レビュー
indigo la End | 2016.06.08
indigo la End「藍色ミュージック」
“愛の名言”が満載の極上ラブソング・アルバム
indigo la Endがまた完成度を上げた。歌も演奏もアレンジも緊張感に満ちていて、作品の美しさが最高のレベルに達している。さらにはリリックも独特の恋愛観を主張して、新作『藍色ミュージック』は極上のラブソング・アルバムになっている。
1曲目の「藍色好きさ」にまず驚かされた。最初に聴いたとき、サウンドのタッチ、アレンジ、メロディ、歌詞の各要素がバラバラに聴こえたのだ。普通ではあり得ない組み合わせに、何を伝えようとしているのかを一瞬、見失った。が、何度も聴いているうちに、それらが次第に結びついていって、これまでの常識を超える切ないラブソングが立ち現れたのだった。
特に最初のサビまでの歌詞が素晴らしい。出会いから惹かれあっていく過程が、無駄なく描かれる。♪足しても引いても僕らはいつも違う数になって♪というフレーズには、ラブソング史上に残る鮮烈さがある。
フルアルバム『藍色ミュージック』はファンクありポストロックありと、リズムのバリエーションが豊富で、「ココロネ」などの洗練されたアレンジを表現する長田カーティスのギター、後鳥亮介のベース、佐藤栄太郎のドラムスにいちいち説得力がある。
その説得力を背景に川谷絵音の歌詞が冴えまくる。わずか1分55秒の小品「シノブ」の♪言い切らないとかっこ悪い♪、「愛の逆流」の♪でも愛は逆流しないだろう♪、「eye」の♪自分の目で見たものを僕は信じて生きていく♪、「ダンスが続けば」の♪当たり前に踊ったら 結果命が削れてく♪など、挙げたらきりのないほどの“愛の名言”が満載なのだ。
怒涛のように13曲のラブソングを吐き出した後、ラストの「インディゴラブストーリー」で川谷は♪笑えるラブストーリーを演じたい♪とトドメを刺す。
「藍色好きさ」で始まり、「インディゴラブストーリー」で終わる構成に、「“藍”は“愛”なの?」という素朴な思いがよぎる。だがそんなことより、川谷というラブソングライターにはまだまだ莫大なエネルギーがあり、彼の行く末がますます楽しみになった。この先、川谷は果たしてどんなラブソングにたどり着くのだろう。ちょっと恐ろしくもなった。
【文:平山雄一】
リリース情報
藍色ミュージック(初回限定盤)
発売日: 2016年06月08日
価格: ¥ 3,500(本体)+税
レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン
収録曲
01. 藍色好きさ
02. 雫に恋して
03. ココロネ
04. 愛の逆流
05. シノブ
06. 悲しくなる前に
07. 忘れて花束
08. eye
09. 夏夜のマジック
10. 風詠む季節
11. music A
12. ダンスが続けば
13. 心雨
14. インディゴラブストーリー