35周年を迎えた布袋寅泰はアニバーサリー企画『8BEATのシルエット』を進行中だが、その中核となるアイテムの一つとして、3枚組ベストアルバム『51 Emotions -the best for the future-』がリリースされる。

3枚のCDにはそれぞれサブタイトルが付けられている。
【Disc 1 Beat】は切れのいいHOTEIのロックンロール・ナンバーが集められている。王道の「POISON」やロカビリー・テイストの「バンビーナ」、最新シングルの「8BEATのシルエット」まで、HOTEIのトレードマークのかっこいいイントロを持つ曲が勢ぞろい。こうしてみると、彼はつくづく“Beat”に命を賭けてきたことがわかる。日本のギタリストたちが“ギター・ソロ”の練習ばかりしていた80年代に、それを横目にグルーヴィーなカッティングを決めてきたHOTEI。そのエッセンスが詰め込まれていて、理屈抜きにエキサイトできる1枚だ。

【Disc 2 Heart】は文字通り心にしみる“HOTEI名曲集”だ。メロディメーカーとしての魅力全開の選曲で、リリックにもHOTEIの高い精神性が刻み込まれている。「さらば青春の光」や「ラストシーン」など、改めて珠玉のロックチューンだと再認識してしまった。また「FLY INTO YOUR DREAM」の渾身のギターソロは、何度聴いても泣けるのだった。

そして、僕にとっていちばん聴き応えのあったのが【Disc 3 Dream】だった。
映画『キル・ビル』のテーマ「Battle Without Honor or Humanity」などのインストは、ロッカーとして、ボーカリストとしてのHOTEIとはまた別の魅力がある。
またデヴィッド・ボウイの「STARMAN」やT.REXの「テレグラム・サム」など、HOTEIのリスペクトするアーティストのカバーの斬新さには目を見張る。
さらに今年3月に行なわれたライブハウス・ツアーからのライブテイクなど、Disc3はまさにHOTEI自身の選曲によるベストならではのスペシャル感が満載だ。

また付録のセルフライナーノーツには、今だから話せる制作秘話が収められていて、デビュー以来、HOTEIを見続けてきた僕も知らなかったエピソードや、インタビューできなかった事実が明らかにされているのが驚きだ。

収録された51曲を聴いて思うのは、これだけの実績を持ちながら、今、HOTEIがロンドンから世界にチャレンジしていることの勇気の意味だ。
　Disc3のサブタイトルの“Dream”はダテじゃない。HOTEIはいつでも真剣に夢を見てきた。その事実を踏まえた上で、このベストは“たった今のHOTEI”の輝きを描き出す優れたドキュメントになっている。

【文：平山雄一】