レビュー

水曜日のカンパネラ | 2016.06.22

 メジャー1stEPのタイトルは『UMA』。少年少女時代に子供雑誌の怪しげな特集にワクワクしたり、思春期に周囲には内緒で『ムー』をこっそり愛読していたオカルト愛好家などはよくご存知だと思うが、「UMA/ユーマ」とは存在がはっきりとは確認されていないミステリアスな生命体のことだ。今作に収録されている各曲のモチーフとなっているのは、まさしくこのUMAなのだが……UMAを描いているというわけでもないところに、水曜日のカンパネラならではの作風を改めて感じる。

 水カンの魅力を問われたら、ファンは何と答えるだろうか? サウンドの洗練されたかっこよさ、ミュージックビデオやアートワークのオシャレさ、コムアイの華やかな存在感、ライヴの圧倒的な楽しさなど、具体的なポイントも勿論挙げるだろうが、「なんか気持ちいいモヤモヤ感があるんだよ」という感覚的な部分にも触れたくなるのではないかと思う。過去の曲を例として挙げるならば……どういうわけかお風呂についての歌になっている「ディアブロ」、太陽神の歌かと思えばカレーの美味しそうな香りが漂ってくる「ラー」などは、そういう実感を得られる代表格だろう。「意味不明なようでいて意味がある気もして、冗談のようでいて真面目な気もして、無関係なようでいて関係があるような気もする」という論理性と非論理性の間を反復横跳びするような刺激を届けてくれるのが、水カンの楽しさだ。『UMA』に収録されている曲たちにも、そういうワクワクが広がっている。

 採血方法や注射針の扱い方が実に分かりやすく紹介されていて、血液の神秘的な機能についても学習できるだけでなく、謎の吸血生物が出没している中南米の風景も思い浮かんでしまう「チュパカブラ」。日本を代表するUMAにスポットを当て、ストリートグループ同士の抗争や地域振興までもなんとなく浮き彫りにしている「ツチノコ」。どうやら爽やかなイメチェンをして南国でブイブイ言わせたいらしい大男の健気な本音が伝わってくる「雪国イエティ」……などなど。こうして文章で説明を試みたものを読むとなかなか奇天烈だが、実際に聴くとごく自然に受け止めることができて、何よりも猛烈に楽しい7曲が、『UMA』には詰まっている。サウンドという形のないもの用いることにより、意味や理屈を越えて人々の本能に訴えかけることができる「音楽」/意味やメッセージを託すことができると同時に、いくらでも意味やメッセージから逸脱することもできる「言葉」――性質が異なるこの2つのツールをとことん活用している水カンならではの作品だと言えよう。五感と論理的思考に猫だましをくらわすようなこの味わい、ぜひたくさんの人に知って欲しい。

【文:田中 大】



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tag一覧 アルバム 女性ボーカル 水曜日のカンパネラ

リリース情報

UMA[初回限定盤]

UMA[初回限定盤]

発売日: 2016年06月22日

価格: ¥ 3,611(本体)+税

レーベル: WARNER MUSIC JAPAN

収録曲

01. チュパカブラ
02. ツチノコ
03. 雪男イエティ
04. ユニコ
05. フェニックス
06. バク
07. クラーケン

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