レビュー

クリープハイプ | 2016.08.10

連載 第133週
クリープハイプ
「鬼」


裏切りをエネルギーに変えるクリープハイプは、やっぱり“ロックの鬼”だ

 これまでクリープハイプの曲は数多くの映画に起用されてきた。尾崎世界観の書く歌はどれもがドラマティックなのだから、それは当然と言えば当然のことだった。ストーリー性のある歌を作るのが得意な尾崎は、おそらく映画を見たり小説を読むたびに、「自分だったらこのストーリーに対して、こんな歌を作る」というシュミレーションを日々行なっているのだろう。
 だから今回、初めてテレビドラマの主題歌のオーダーが来たときに、尾崎は「今まで散々待ち焦がれて、待ち焦げて、決まった時は嬉しいを通り越して、世の中に復讐するような気持ちで作りました」とコメントしている。この鬼気迫る決意が、なんとも尾崎らしい。そして尾崎はドラマ『そして、誰もいなくなった』の裏切られ続ける主人公に、半分は自分を重ね、半分は裏切る側に回ってニューシングル「鬼」を書いた。それは尾崎自身が裏切りをエネルギーにして運命を切り拓いてきたことと、大いに関係がある。まさにこのドラマにクリープハイプはピッタリはまるバンドなのである。

 サウンドも歌の内容に合わせて、非常に荒々しい。ひとつひとつの音のエッジが立っていて、いい意味でイラッとさせてくれる。そこに「俺」「誰」「コレ」という尾崎必殺の言葉重ねの連打がかぶると、まぎれもなくクリープハイプの世界が出現する。昔からある遊び“目隠し鬼”のハヤシ言葉をモチーフに、追いつめられる主人公が描かれる。日曜日のテレビドラマにあるまじき不穏な主題歌だ。だが、不穏だからこそ、クリープハイプなのだ。尾崎はこの歌で、見事に“世の中に復讐”することに成功している。

 打って変わって、カップリングの「炭、酸々」は、どこか牧歌的な香りのするホッとするナンバー。もちろんタイトルはサードシングル「憂、燦々」のパロディで、この歌を「鬼」と一緒に発表する尾崎のタフなユーモア精神が見て取れる。もう1曲の「買いもの」は長谷川カオナシの作詞・作曲・ボーカルのワルツで、切なく、味わい深い。
この3曲を聴いていると、9月にリリースされるニューアルバムがますます楽しみになってくる。

【文:平山雄一】

リリース情報

鬼(初回限定盤)

鬼(初回限定盤)

発売日: 2016年08月10日

価格: ¥ 1,800(本体)+税

レーベル: ユニバーサル シグマ

収録曲

01.鬼
02.炭、酸々
03.買いもの

[初回盤DVD]
「尾崎世界観脱退〜そして、尾崎はいなくなる〜」

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