レビュー
にゃんぞぬデシ | 2016.09.07
にゃんぞぬデシ
『はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。』
変に堂々としている、にゃんぞぬデシのポップ観
18歳になったシンガーソングライター、にゃんぞぬデシが、ちょっと振り返って作ったのがデビューミニアルバム『はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。』だ。
にゃんぞぬデシの魅力は、変に堂々としていること。“変に”と書いたのは、彼女の年齢から想像する以上に、自分の能力をしっかり把握した曲作りとボーカリゼーションを展開しているからだ。そこが、“変に堂々としている”ように見える。特に自分の声の中低域の響き方を熟知していて、どの曲も歌い出しのAメロ部分の歌詞がはっきり聴こえる。サビに移行すると、今度は高くて繊細な女の子らしい声で、歌に込める思いを強く印象付ける。これはシンガーソングライターにとって、かなり強力な武器になっている。
たとえば「しろくま観覧車」という曲では、前半はZARDの坂井泉水みたいな落ち着きがあり、サビではパンチのある森高千里になるという感じ。こう書くと、にゃんぞぬデシがハイブリッドなモンスターに見えるかもしれないが、実は一人の女の子の中にこうした複数のテイストが自然に収まっているのが魅力的なのだ。
しかし、堂々としている歌の一方で、にゃんぞぬデシのMCは、挙動不審すれすれ。全然、堂々としていない。とっ散らかって、カミカミ。だが、そんなMCがかえってにゃんぞぬデシの歌のリアリティを支えている。彼女の歌う世界こそが、彼女の“夢”なのだ。それ以外の場面でのにゃんぞぬデシは、年齢なりの自信と不安を持った女子なのだ。その夢と不安のバランスが、素敵だ。
また、もう一つ付け加えるとすれば、メロディに言葉を載せる“譜割”がとても素直で、昭和末期から平成初期に現われた“ガールポップ”の流れを汲む王道をにゃんぞぬデシは歩んでいると言えるだろう。その中に、星野源などにある21世紀のちょっと捻じれた日常やナンセンスが潜ませてあるのも面白い。
まだ“何者”ともいえないが、にゃんぞぬデシが提示するポップ観には可能性がたっぷりある。変に堂々としているのは、彼女が自分の大きな可能性を信じ切っているからなのかもしれない。
【文:平山雄一】
リリース情報
はじめまして。17歳です。ハッピーエンド建設中。
発売日: 2016年09月14日
価格: ¥ 1,500(本体)+税
レーベル: mona records
収録曲
1.ハッピーエンド建設中
2.しろくま観覧車(しろくま in the 南極)
3.BTB海岸
4.ナンパりんごマンゴー
5.ガール都営浅草線
6.バイバイバイまたね