レビュー

Chara | 2016.09.14

連載 第138週
Chara
『Junior Sweet-25th Anniversary Edition-』


Charaは、恋する者の心に宿る宇宙の真理を伝えてくれる

 これまでJ-POPシーンには数々の女性スーパー・ボーカリストが登場したが、中でもCharaは破格のオリジナリティを持つアーティストの一人だ。女性ファンが非常に多いアーティストながら、“フォロワー”と言える人が少ないのは、Charaの個性があまりに強烈だからだ。声も、歌い方も、歌詞も、メロディも、彼女に似ているシンガーソングライターはまったくいない。

90年代初頭に音楽シーンに現われたCharaは、特にグルーヴにおいて、他の追従を許さない存在だった。Charaが感じ取り、表現するグルーヴは、当時の男性アーティストとはまったく異なる味わいと破壊力があった。そのグルーヴは、アメリカを通り越してアフリカにまで及ぶディープなテイストを根幹に持っている。その太さは女性アーティストでは比類がなく、それは今も変わっていない。

今回、リマスターして発売される『Junior Sweet』は、Charaが1997年に発表した5作目のアルバムで、チャート初登場1位を記録し、ミリオンセラーとなった。「やさしい気持ち」や「タイムマシーン」などが収録されている。もともとの音源も優れていたが、1曲目の「ミルク」のイントロのアコースティック・ギターの音色を聴いただけで、このリマスターが成功していることが分かる。

 さらには♪みんなはいい子だよ 自分はネコだよ 泣いたってミルクしかくれない―。♪という「ミルク」の歌詞を久しぶりに聴いて、当時、彼女の歌がどんだけぶっ飛んでいたのかを僕は思い出した。ここにあるのは、自分をネコに例えるという単なる擬人法ではない。聴いていると、本当にネコが自分の思いや感覚をつづっているような、不思議な気分に襲われる。そしてその向こう側に、人間の孤独や、穏やかさや、退屈などが立ち現れる。それらは非常に個人的な生き方に属する問題で、それを個人として的確に描き出すCharaの表現者としての意識の高さが感じとれる。

 そうした今もフレッシュなフィロソフィー(哲学)は、女性ならではというより、Charaだからこそ見出せた素晴らしいアイデアだと思う。そのフィロソフィーを、2016年にアップデートしたサウンドで聴くことは、想像以上に刺激的だ。キュートな「しましまのバンビ」は、斬新な方法で女の子の可愛さを訴える。「タイムマシーン」の♪恋人はもうこない 時代はもどらないよね♪というリリックは、恋する者の心の中に宿る、宇宙規模の真理を伝えてくれる。だからCharaのラブソングは、大きくて深いのだ。

 デビュー25周年を迎えたCharaの傑作アルバムを、今、改めて聴くと、彼女のアーティストとしての揺るぎない姿勢が見えてくる。嬉しいことに、このアルバムの再現ツアーが発表された。いつもクオリティの高いライブを見せてくれるCharaが、厳選するライブバンドのメンバーが誰になるのかとても楽しみだ。

【文:平山雄一】

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リリース情報

Junior Sweet-25th Anniversary Edition-【完全生産限定盤】

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Junior Sweet-25th Anniversary Edition-【完全生産限定盤】

発売日: 2016年09月21日

価格: ¥ 4,800(本体)+税

レーベル: KRE

収録曲

〜CD収録曲〜
1. ミルク
2. やさしい気持ち(しあわせ Version)
3. しましまのバンビ
4. 私の名前はおバカさん
5. タイムマシーン
6. 勝手にきた
7. どこに行ったんだろう?あのバカは
8. 私はかわいい人といわれたい(Original version)
9. Junior Sweet
10.花の夢
11.愛の絆
12.せつないもの

〜Blu-ray収録曲〜
1. やさしい気持ち
2. Swallowtail Butterfly 〜あいのうた〜
3. BREAK THESE CHAIN
4. 勝手にきた
5. どこに行ったんだろう?あのバカは
6. 私はかわいい人といわれたい
7. ミルク
8. Happy Toy
9. Tiny Tiny Tiny
10. せつないもの

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