レビュー

セプテンバーミー | 2016.09.21

連載 第139週
セプテンバーミー
『絶対的未来奇譚』


セプテンバーミーは、不思議な超常感覚を見事に音楽化する

 期待のバンド“セプテンバーミー”のニュー・ミニアルバムは、彼らの過去と現在と未来が詰め込まれている。ドイヒロト(Vo&G)、ココナッツ先輩(B&Cho)、岸波藍(Dr&Cho)に新メンバーが加わった。ずっとサポートを務めてきたギタリスト、タナカ・ターナが正式加入。その4人でレコーディングされたのが、今回の『絶対的未来奇譚』だ。

 1曲目の「27club」は、爆発的なリズムに乗ってギターが掻き鳴らされる“セプテンバーミーの今”が聴こえる。歌が始まるとギターはボーカルの邪魔をしないように“スカ”のリズムにチェンジして、ドイの声がすっきりと聴こえてくる。なんだか名人芸の風格が早くも漂ってくるようだ。ただし、歌詞はナンセンス寸前の熱いラブソングで、バンドのパッションが伝わってくる。
 続く「彼女inワンダーランド」はさらにマッドなラブソング。こうした破滅型ラブソングもセプテンバーミーの得意とするところ。ドイのシャウトも熱を帯びる。

 そして3曲目「テレキャスターマジック」でギアチェンジする。テレキャスターとはドイが愛用するエレキギター・モデルの名前。彼にとって唯一無二の武器をテーマに、たった1本のギターで切り拓いてきた過去・現在・未来が歌われる。こうしたミュージシャンの心を歌うのも、セプテンバーミーの特徴だ。

 こうしてセプテンバーミーは『絶対的未来奇譚』で、自分たちの立ち位置をしっかり確かめながら、4人の新しいセプテンバーミーの作品を積み重ねていく。

 僕のお気に入りは、アルバムの真ん中に陣取る5曲目の「夕闇とサイレン」だ。少年期にある不安や妄想が生む“誰か”。確かにいたはずなのに、記憶の彼方に去ってしまった“幻の友達”がこの歌の主人公だ。セプテンバーミーはこれまでも、「幽霊ダイブ」や「妖怪ダンス」などオカルト的なナンバーを発表してきたが、僕はこの「夕闇とサイレン」がいちばんの“オカルト・ロック”だと思う。歌の内容に合わせて、サウンドも繊細なアンサンブルで構成されていて、このバンドの新生面が打ち出されている。“蝉の抜け殻”や“ブランコ”などの日常的な小道具をうまく使いながら、ティーンエイジャーの不思議な超常感覚を音楽化している。こんなことができるのは、“今のセプテンバーミー”だけだろう。

 その他、タナカ・ターナが作曲した「New World Order」なども存在を主張して、聴きごたえのあるミニアルバムに仕上がった。

 さらに活躍の場を広げようとしているセプテンバーミーにとって、『絶対的未来奇譚』は強力なウエポンになることだろう。


【文:平山雄一】

リリース情報

セプテンバーミー 「絶対的未来奇譚」

セプテンバーミー 「絶対的未来奇譚」

発売日: 2016年09月21日

価格: ¥ 1,852(本体)+税

レーベル: ココナッツレーベル

収録曲

1.27club
2.彼女inワンダーランド
3.テレキャスターマジック
4.LOVE DIVER
5.夕闇とサイレン
6.CRシュレディンガーの猫
7.New World Order
8.unicorn

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