レビュー

androp | 2016.10.12

 今作『blue』は、andropが[image world]を立ち上げてから初めてリリースする1枚。最初に触れるべきなのは、メンバー全員が作詞や作曲を手がけているという点だろう。内澤崇仁(Vo・G)の作風とはまた別の趣きを帯びた曲が、存在感を大いに発揮している。前田恭介(B)が作曲、伊藤彬彦(Dr)が作詞をしている「Lost」で響き渡る狂おしくも瑞々しいメロディ。佐藤拓也(G・Key)が作曲、内澤が作詞をした「Kienai」に反映されている90年代頃のギターロックサウンドへの敬愛を感じるエッセンス。これらは、andropの音楽性が一層の広がりを見せつつあることをハッキリと示している。

 そして、このアルバムを語る上で何よりも欠かせないのは、端的に表現するならば「闇を軸にした作品」とも言うべき側面を持っているという点だろう。例えば、内澤が作詞作曲を手がけた1曲目の「Kaonashi」は、ドキリとするリスナーが多いと思う。生々しい感情の吐露、激しい憎しみや悲しみをイメージさせる言葉と音がダイレクトに迫って来るこの曲は、これまでのandropとは明らかに異なる。

 先程「闇を軸にした作品」と表現したが、それに合わせるのならば「光を軸にした作品」というのが今までのこのバンドの音楽だ。歌われる言葉、高鳴る音像、壮大なハーモニーなど、あらゆる要素で光を生み出す姿が、様々な曲に刻まれてきた。しかし、今作によってandropが、これまでとは真逆の領域へと踏み込んだと捉えるのは適切ではないと思う。なぜなら「迷い」「怒り」「悲しみ」という感情の暗部の核で実はメラメラと燃え盛っている「生きることへの猛烈な真剣さ」とでも言うべき眩しさを見つめている……というのが、このアルバムを聴いて湧き起る印象だからだ。つまり『blue』で描かれているものも、「光」だと言えるのではないだろうか。

 これまでになかったアプローチを積極的に求めつつも、バンドとしての本質をますます磨き上げる作業……今作から窺われるそんな姿は、今後のandropの活動にも繋がるものなのかもしれない。新しい環境に身を置いて力強く歩み始めた彼らに漲っている清々しいエネルギーを、ぜひ収録されている各曲を通じて噛み締めて欲しい。

【文:田中 大】



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tag一覧 男性ボーカル androp

リリース情報

blue

blue

発売日: 2016年10月12日

価格: ¥ 1,852(本体)+税

レーベル: image world

収録曲

01.Kaonashi
02.Irony
03.Digi Piece
04.Sunny Day
05.Kienai
06.Lost

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