レビュー

LILI LIMIT | 2016.10.26

連載 第144週
LILI LIMIT『a.k.a』



メロディ、サウンド、リリックのどれをとっても“破格のニューカマー”だ。

 1年前、去年の10月に新宿ロフトで初めて観たLILI LIMITは鮮烈だった。男女混成5人組の編成にはムダがなく、全員でひとつの音楽を“構築”する意識の高いバンドだなという第一印象を持った。その後、新代田FEVERでのライブも観たが、1stフルアルバム『a.k.a』は、それらの印象を遥かに上回る完成度の仕上がりになっている。今年1月にリリースしたミニアルバム『#apieceofcake』でさえ、もう遠いと思わせる進化を遂げている。ただ、キーワードの“構築”は変わっていない。メンバーそれぞれの持つ豊かな音楽性を適所にちりばめて、LILI LIMITの新作は成り立っているのだ。

 1曲目「A Short Film」は、複数の音楽要素が並行して進む。ボーカルのメロディ、シンセのパーカッシヴなリフ、女性ボーカルのカウンターメロディが絡み合ってスタートする。そこにバンド・サウンドが加わるのだが、構成の緻密さの度合いがグッとアップしている。音楽的には“ポリフォニー”と言っていいほどの複雑な音の組み合わせだが、聴いた印象はとてもポップで、複雑さを感じさせないことがこのアルバムのストロングポイントだろう。たとえば「Wink, Blink」では美メロの遠くにノイジーなギターが鳴っていたり、さり気なく音に深みを与えることをおこたらない。
 一方で、シンプルな小品の「On The Knees」や「Space L」、インストの「Space R」などを各所に配して、アルバム全体のアクセントにしている点も、ニューカマーとしては飛び抜けて構成力が高い。

 そうしてリリックは徹底的に“住む”ことや“暮らし”にこだわっているように聴こえる。日常の中で起きた出来事や感傷を細やかに描く牧野純平は、新しいタイプの詩人として注目を浴びることだろう。
 デビューEPに入っていた「Kitchen」の♪とんとん 私の心 まな板のように傷だらけ ねぇもうじき買い替え時さ♪というドキリとするフレーズがあるかと思うと、「A Few Incisive Mornings」の♪あの日の台所は今じゃ知らない誰かの物だよ♪とここでも“生活の場”に詩を見つけ出す。アルバムの最後から2曲目の「Naked」で♪願いをこめて僕が求める普通の暮らし♪と素直に告白する。さらにはラストの「Self Portrait」で♪どこで何していたって結局この1クール 脚本家は私♪とユーモラスに締めくくる。心憎いほどの演出だ。
 メロディ、サウンド、リリックのどれをとっても“破格のニューカマー”の初フルアルバムだ。

【文:平山雄一】

リリース情報

a.k.a

a.k.a

発売日: 2016年10月26日

価格: ¥ 3,333(本体)+税

レーベル: Ki/oon Music

収録曲

01. A Short Film
02. Wink, Blink
03. Kitchen
04. Observe
05. On The Knees
06. Suite Room
07. Neighborhood
08. Space L
09. Living Room
10. A Few Incisive Mornings
11. Space R
12. Naked
13. Self Portrait

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