レビュー
classicus | 2016.12.07
andymoriにおける岡山健二と言えば、彼自身がボーカルをとる「ひまわり」という曲があったように、眩しい笑顔でガハハと笑う豪快な側面がありつつ、その一方では、いつもどことなく難しい顔をしていて、ナイーブなイメージも強かった。classicusの1stアルバムは、岡山のそんな印象はそのままに、「それでも」とあらたな一歩を踏み出した作品なのである。
andymoriの解散後、上京してきた村上淳也(vo、ba)、岡山の実弟である靖史(gt)と共に2015年4月に本格始動したclassicus。岡山はボーカルとドラム、さらにはギターやキーボードも担当し、全曲の詞曲も手がけている。昨年までは小山田壮平の立ち上げたSparkling Recordsに個人名義で籍を置いていたが、今年の1月にレーベルから離れ、自らの活動方法を模索しながら今作『classicus is not like that』を完成させた。
音楽性を一言で言えば、オルタナ寄りのフォークロックといった感じで、ペイヴメントに代表される90年代のアメリカのインディロック的なローファイ感やひねくれ具合がありつつ、ザ・ビートルズ的なスタンダード感も持ち合わせる。日本のバンドで言えば、andymoriやALはもちろん、くるりと比較することも可能だし、ソフトな歌声の岡山と、やや男臭い村上のツインボーカルからは、アナログフィッシュを連想することもできる。
アレンジに関しては全体的にシンプルで、弾き語りをベースに、曲ごとにハーモニーや鍵盤などでていねいに色付けしていったという印象。“classicus”というバンド名は、ラテン語で“第一級の、最初の”といった意味を表す単語だが、リリカルで美しいメロディからは、“クラシック”という言葉が持つ高い普遍性も感じさせる。そのうえで『classicus is not like that』というタイトルをつけているあたり、「俺たちまだまだこんなもんじゃないよ」という意思表示も感じられ、本作はバンドにとってあくまで(しかし、とても重要な)第一歩なのだと言うべきだろう。
歌詞はやはりナイーブな色合いが強く、どこか内省的で、会えなくなってしまった人のことを今も思い出す男の子的な感覚が通底している。しかし、岡山はただノスタルジーに浸っているわけではなく、本作の中でも屈指の名曲「スマイル」での♪僕はいつも 素直でありたい♪というラインが象徴するように、ただ自分らしくあることを願い、未来を見据えている。小山田と歌詞を共作した「ひまわり」で♪僕の声が聞こえているかい? 君のことを呼んでいるんだよ♪と歌っていた岡山が、いまだブルーにこんがらがりながら、それでも自ら歌うことを選んだという事実は、とても感動的だと思う。
【文:金子厚武】
リリース情報
classicus is not like that
発売日: 2016年12月07日
価格: ¥ 2,315(本体)+税
レーベル: SPACE SHOWER MUSIC
収録曲
1, 君の家まで
2, ピースメーカー
3, 108
4, スライダー
5, 昨日、君の夢を見たよ
6, 地下鉄
7, フェルメールの肖像
8, フラフラ
9, ハローフューチャー
10, スマイル
11, 春の庭