レビュー
Nulbarich | 2016.12.14
連載 第151週 Nulbarich「NEW ERA c/w Fallin’」
レコーディングしているときからの夢が実現した7インチ
R&B系のバリエーションは、サウンドもシンガーも出尽くしたように思っていたが、Nulbarichはユニークなアプローチで音楽シーンに新しい存在感を示した。
Nulbarich作品は、まずトラックが新鮮だ。生楽器のグルーヴも、コンピューター打ち込みのグルーヴも、どちらも把握したうえでアレンジを選択している。エレクトリックピアノやオルガンの使用分量を調節することで、流行感と懐古感のバランスを取っているあたり、なかなかの曲者だ。それに食いついてくる業界人や早耳リスナーをうまく取り込んだ戦略も見事。
そのバランス感覚はビジュアル面でも同じで、顔を隠すというオーソドックスな“謎”と、キモかわいらしさを同居させている。キャラクターのボディバランスがジャミロクワイそっくりなことを、多くの音楽ファンが笑って見逃してくれることを承知している気配も心憎い仕業だ。
そして今回、以前にアルバムのリード曲としてリリースした「NEW ERA」を7インチアナログ盤で出すことになった。
「時代の流れももちろんあるけど、元々DJを趣味でやっていてレコードを学生時代はよく集めてたのでNulbarichの音源がレコードにできるというのは特別な思いがありました。個人的にもレコードのブームがきてるのはすごく嬉しいです。」(From JQ リーダー)。
ここ1、2年、アナログ盤を出すことが音楽性の高いイメージを演出することに繋がると考える自称アナログファンのミュージシャンが多いが、JQがDJ経験者であることを踏まえると、Nulbarichは自分たちの音楽とアナログ盤の相性をよく知ったうえでのリリースだということがわかる。
僕も最近、アナログ盤を使ったイベントを始めたので、アナログの特性はよく把握している。キモになるのは“音量”。それも爆音で聴いたほうが、立体感のあるアナログサウンドの良さが発揮される。おそらくJQは、DJプレイを通して大音量を経験している。しかも回転数の多い7インチは、アルバム(12インチ)に比べると格段に情報量が多く、音の切れがいい。きっとNulbarichは、スタジオでレコーディングしているときから、アナログ盤を出したいと思っていたのだろう。
だからこの7インチ盤は、大音量で聴くべし! しかもヘッドフォンではなく、スピーカーを鳴らして楽しむべし!!
【文:平山雄一】
リリース情報
7inchアナログ盤『NEW ERA c/w Fallin’』
発売日: 2016年12月21日
価格: ¥ 1,500(本体)+税
レーベル: レインボーエンタテインメント
収録曲
A-side 「NEW ERA」
B-side 「Fallin’」