レビュー
ONIGAWARA | 2017.03.21
ずるい! こんな、世界的ヒット曲とか名ディスコチューンとか不朽のアイドルソングをネタに作ったらいい曲づくめになるに決まってる! ずるいぞONIGAWARA!
“スーパーJ-POPユニット”を謳うONIGAWARAの1stフルアルバム『ヒットチャートをねらえ!』を一聴して、笑顔で漏らしてしまった感想だ。この潔さと完成度の高さにぐうの音も出ない。「オマージュ」「パロディ」「リスペクト」「模倣」「パクリ」「サンプリング」「彷彿とさせる」……形容の仕方はいろいろあるが、良質なポップミュージックがこうして継承されアップデートされていくのは素晴らしいことだと思う。往年の名曲を愛する人が、そこへの愛とオリジナリティをにじませた曲を作り、次の世代に親しまれ、それが新たな名曲と化して巡り巡っていくのは、音楽の歴史上繰り返されてきた事実だ。現に本人たちも、サウンドに表れるオマージュ的な要素について「特に意識したものでなく自然とカラダの内側から湧いてくる、僕らの『愛』そのもの」と語っている。
とはいえ彼らは、懐かしのヒットソングの方程式を使って遊び倒しただけではない。竹内サティフォ(Vo, G, Programming)のメロディメイカーとしての秀でた才能や、どんな曲も歌いこなしてしまうクリアな声、斉藤伸也(Vo, GAYA, Programming)の“キャッチー”を熟知したアレンジ能力や「ムカつくけどかわいい」と話題の人を惹き付けるパフォーマンス。これらはONIGAWARAでしか味わえない唯一無二の武器であり、竹内電気時代も含めて彼らが積み重ねてきた経験の産物でもあるだろう。
また、新録の表題曲「ヒットチャートをねらえ!」は、ベースにハマ・オカモト(OKAMOTO’S)、ドラムにマシータ、キーボードにコイチ(Sawagi)、ストリングスに柴由佳子(チーナ)、パーカッションに西岡ヒデローが参加しており、M6「シャッターチャンス’93」のベースはカジヒデキ、ドラムは古川太一(Koncos)、ピアノはTHE CHARM PARK、M8「GATTEN承知之助~We can do it!!~」のスクラッチはDJ松永(Creepy Nuts)が担当している。このように多種多様なジャンルのミュージシャンを巻き込んでいるのも、J-POPのごちゃ混ぜ感を象徴しているように思えた。
愉快・痛快・明快の三拍子そろったキャッチーなポップスの傑作と言える今作だが、ただ1曲、最後に流れてくる「I don’t wanna die」だけは様相が違った。ユニットの矜持を吐露した歌詞と、未知の領域を開拓したトラック。バンドでもアイドルでもないこの2人組はまだまだ死なずに先に進んでいくのだろう、と感じさせる幕の閉じ方も見事だった。
【文:鳴田 麻未】
リリース情報
ヒットチャートをねらえ!
発売日: 2017年03月22日
価格: ¥ 2,500(本体)+税
レーベル: LASTRUM
収録曲
1.ヒットチャートをねらえ!
2.ダバダバ
3.タンクトップは似合わない
4.僕の恋人
5.目立ってます
6.シャッターチャンス’93
7.Shake it!
8.GATTEN承知之助~We can do it!!~
9.#gawararadio
10.I don’t wanna die