レビュー
赤い公園 | 2017.04.17
2月にシングル「闇夜に提灯」をリリースした時に、「2017年は、“にー、しー、ろーでシングルを出します”と宣言した赤い公園が、その言葉通り4月19日にドロップするニューシングル「恋と嘘」。思い切り胸キュンなラブソングだが、ただの甘いラブソングにしないのが赤い公園スタイル。
イントロなしで佐藤千明がサビから歌い出すインパクト抜群の構成で、揺れながら高まる気持ちを表すようなメロディとサウンドが、歌をくっきり浮かび上がらせる。津野米咲の書く曲には毎回驚かされるが、今回もまた脱帽だ。チェンバロ風の鍵盤だけが入った新鮮な冒頭から、バンドの音が重なっていくと紛れもなく赤い公園サウンド。王道のようでいて捻りの入った津野のギター、藤本ひかりのベースと歌川菜穂のドラムが安定感のあるリズムで佐藤の歌を受け止める。亀田誠治のプロデュースは、また腕を上げた彼女たちを自然に引き出した。
恋をしていたら、つい嘘をついてしまうこともある。そんな気持ちを素直に描いた絶品のラブソング。ジャケットの缶に“キレのある恋絞り感0%”とあるのが赤い公園らしいサバサバした感じを伝えてくるが、津野はこの曲について「恋をしていると、そうでない時には感じなかったはずの、沢山のコンプレックスに押しつぶされてしまいそうになります。(略)そんな小さな嘘たちが、ひとときの勇気をくれるのです」とコメントしている。そう、大好きなのにそんなことないふりをしたり、相手を喜ばせたくて大げさな反応をしてしまったり。そんな自分を発見するのも恋心の面白いところ。デート前のソワソワ感を描いたMVも可愛らしく、そこに登場する飾らない赤い公園のメンバーにも親近感を感じるのだが、このシングルのジャケット裏面の写真で家飲みしている風の4人はMV収録の打ち上げにも見えて来る。
カップリングの「スーパーハッピーソング」は、「ウルトラダークサイドな時に生まれてくれた楽曲」と津野。ハッピーだから歌うのではなく、ハッピーになるために歌う歌、と思えばいいだろうか。ダークな過去には手を振って明日の奇跡に向かおうと、サビでは4人が声をそろえて歌っている。聴いていると、つい笑顔で一緒に歌いたくなる曲だ。津野も「会場の皆様との大合唱を、心から楽しみにしております」とコメントしている。そして60年代ポップス風の軽やかなビートとメロディに、赤い公園らしいガレージ感が不思議と似合って楽しくステップしたくなる曲だから、ライブで盛り上がること間違い無し。
アグレッシブな「闇夜に提灯」からキュートな「恋と嘘」へ、新しい道を繋いだ赤い公園。この道はまだまだ先へ続いていく。
【文:今井 智子】
リリース情報
恋と嘘
発売日: 2017年04月19日
価格: ¥ 1,167(本体)+税
レーベル: ユニバーサル ミュージック
収録曲
1.恋と嘘
2.スーパーハッピーソング