レビュー

キュウソネコカミ | 2017.04.25

 キュウソネコカミのライブは圧縮率が尋常じゃない。まず1曲の中に1曲以上の要素が詰め込められている。ライブではそこに踊れる演出が加わる。さらにライブの進行と共に演出の規模は拡大。結果、1本のライブに2~3本分の大容量が圧縮されることとなる。その彼らが初のライブ・アルバムを発表した。タイトルは『キュウソネコカミ-THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー』。全国38本に及ぶツアー、その全会場のライブ音源から全53曲を収録した3枚組で、圧縮率の高さを誇る彼らにふさわしい超大作だ。
Disc1には1月31日のなんばHatchのライブから、ベスト盤的選曲の全16曲を収録。Disc2とDisc3には2016年11月15日の千葉LOOKから2017年2月28日の神戸Harbor Studioまでの全会場から各1曲、全37曲を収録。文句なしの代表曲からファン感涙の名曲まで網羅した、いわゆる神セトリだ。「MEGA SHAKE IT!」「ビビった」など2回収録された9曲は両テイクとも素晴らしい。図らずも「君の名は。」とリンクした「What’s your name?」など時代の空気感を味わえる曲もある。何よりも、自分が観に行ったライブの音源を聴けることが嬉しい。などなど、その情報量の多さで何重にも楽しめる内容になっている。

一方で、情報量が極端に少ない面も。たとえばDisc1の「DQNなりたい、40代で死にたい」。ヨコタシンノスケ(Vo./Key.)が、なぜ会場に向かって「君達は地面だ」と言い放つのか。Disc3の「KMDT25」。ヤマサキセイヤ(Vo./Gt.)は「4人。次、8人。次、16人で囲む!」と何を指示しているのか。異常な盛り上がりだけは伝わるものの、その説明は一切ない。もちろん、頭の中でその場面を補完できるファンにはわかる。しかし、キュウソ未見の人にとっても、それでも充分に楽しめるのだ。情報量の少なさゆえ、会場で起こる悲鳴や歓声がその場の空気を生き生きと伝え、好奇心を激しく刺激するからだ。
キュウソネコカミはそんなリスナーの想像力を、それを刺激するライブという場が持つ力を、全面的に信頼している。それはファンと共に尋常じゃない圧縮率のライブを重ねてきた自負があるからだろう。そんな本作に惹きこまれるうち、Disc1の「ハッピーポンコツ」の一体感や、「何も無い休日」のセイヤの熱唱や、「わかってんだよ」のメッセージが胸を撃ち、ついには、どうしても生で見たいという衝動が起こる。そう、この3枚にも及ぶライブ・アルバムは、キュウソからのライブへの壮大な招待状なのである。

リリース情報

キュウソネコカミ-THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー[初回限定盤3CD+DVD]

キュウソネコカミ-THE LIVE-DMCC REAL ONEMAN TOUR 2016/2017 ボロボロ バキバキ クルットゥー[初回限定盤3CD+DVD]

発売日: 2017年04月26日

価格: ¥ 3,500(本体)+税

レーベル: ビクターエンタテインメント

収録曲

Disc 1 “なんばHatch 2017/01/31”
1. サギグラファー
2. 良いDJ
3. ファントムヴァイブレーション
4. 記憶にございません
5. KMDT25
6. What’s your name?
7. KMTR645
8. 秋エモい
9. MEGA SHAKE IT !
10. OS
11. DQNなりたい、40代で死にたい
12. ハッピーポンコツ
13. 何も無い休日
14. わかってんだよ
15. お願いシェンロン
16. ビビった
他37曲収録

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