レビュー
メロディー・チューバック | 2017.05.08
歌声の魅力を人に伝えるのは本当に難しい。言葉にしようとすると、「どうしようもなく惹かれる」とか、「聴いていると耳が離せなくなる」とか、ただ単純に「好みだ」としか言い様がなく、なんとも心もとない。それでも、素晴らしい歌声に出会った時の興奮や感動は誰かに伝えたくなるもの。メロディー・チューバックは、そんな気持ちを掻き立てられるシンガーだ。
ドラマやアニメの挿入歌や雑誌のモデルとしても活躍していたメロディーは、短大の声楽科に通いながら、2016年にソロ活動を本格的にスタートさせた。TVアニメ『マクロスΔ(デルタ)』で、ウィンダミア王国の若き王子・ハインツの挿入歌「オーラ・サーラ~光る風~」や「ザルド・ヴァーサ!~決意の風~」の歌唱を担当したことで大きな話題を集め、今年1月にミニアルバム『Melody』で待望のメジャーデビューを果たした。「透明感のある、伸びやかで澄んだ歌声」と称されることが多いが、実際にその歌声に触れると、ピュアでイノセントなだけではなく、強さや包容力もあるし、クラシックの音楽理論に基づいているが、親しみやすさもある。ひと言では曰く言いがたい上に、どんなジャンルでも歌いこなせるスキルも併せ持っているため、1stミニアルバムでは、ポップスやロック、R&Bなど、ジャンルは多岐にわたり、日本語歌詞や英語歌詞、言葉のない多重録音など、様々なトライもなされていた。
前作から約3ヶ月ぶりとなる2枚目のミニアルバム『Harmony』でもその姿勢には変わりはない。オープニングナンバーは、前作の1曲目「Melody」と同様に、自身の歌声の多重録音によって構成された「Harmony」が収録されている。続く「幸せのストーリー」は、タイトル通りに幸福感で満ちあふれたウエディングソング。リード曲となっている「君がずっと好きだから」は日本最大級の女子高生団体「チームシンデレラ」とコラボし、リアルな女子高生が「共感できる、今一番カラオケで歌いたい」をコンセプトにして制作された、友達以上恋人未満の“あなた”への思いを歌った、切なくも前向きな片思いソングとなっている。「君が好きだから」と同じくヒットメイカーの今井了介が手がけた「STAGE」は、一転して、EDM調のガーリィー・ハウス。「恋してる」は、友達を好きになってしまったやるせない恋心を歌ったR&Bナンバーで、英語歌詞が多めの「Baby Girl」は、最新のアッパーなブギーファンク。そして、前作同様に、実の妹であるアンジェラ・チューバックを迎えたラストナンバーは、昭和歌謡シーンを彩った双子デュオのザ・ピーナッツ「恋のバカンス」のカバー。2人のハーモニーの心地よさ、ピッチの良さも存分に味わえる、洗練されたラテンジャズに仕上がっている。
前作よりも少し大人の表情を垣間見せているが、果たして、彼女の歌声に最も似合うサウンドはどの曲なのか。おそらく、聞き手の数だけ幾通りもの答えがあるはず。アナログレコードのA面とB面のようにつながっている、もしくは、対比としても楽しめる2枚のミニアルバムを聴き、ぜひ、自分だけの「メロディー・チューバックの歌声の魅力」を見つけてみて欲しい。
【文:永堀 アツオ】
リリース情報
Harmony
発売日: 2017年05月10日
価格: ¥ 1,852(本体)+税
レーベル: 日本クラウン
収録曲
1. Harmony
2. 幸せのストーリー
3. 君がずっと好きだから ※リード曲
4. STAGE
5. 恋してる
6. Baby Girl
7. 恋のバカンス / メロディー・チューバック & アンジェラ・チューバック