レビュー
KEYTALK | 2017.06.06
タイトル曲「黄昏シンフォニー」は、TBSテッペン!水ドラ!!『3人のパパ』の主題歌。この曲を手がけたのは“巨匠”こと寺中友将(Vo・G)だ。彼らしい風味であると同時に、「こういうのは意外と今までにやっていなかったな」という新鮮さもある仕上がりとなっている。
まず、巨匠節とも言うべきものとして示すことができるのは、この曲の全体に広がる、何とも言えず甘酸っぱいムードだ。巨匠と並んで、KEYTALKのメインソングライターである首藤義勝(Vo・B)も胸がキュンとする作風を得意としているが、彼の曲は瑞々しく、繊細なトーンがある。それに対して巨匠から生まれる曲には、哀愁と無骨な優しさが滲む。過去の曲から例を挙げるならば、「エンドロール」や「Oh!En!Ka!」は、まさに巨匠らしさに満ちていた。夕陽に染まる町並み、アスファルト、“君”を見つめる眼差し、温かな気持ち……「黄昏シンフォニー」の中で描写されるあらゆる要素は、男っぽいロマンチシズムの塊だ。浜辺で海を眺めながら過ごすのが好きだと、実に照れくさそうに巨匠が語ってくれことがあるのだが、そういう彼の実像とも重なるものが、この曲には確かに脈打っている。
そして、「黄昏シンフォニー」で発揮されている新鮮さに関しては、真っ直ぐにクライマックスへと突き抜けていくかのような展開が挙げられる。先が読めない起伏に富んだ構成や、随所に盛り込むトリッキーなサウンドで、スリルを生むのがKEYTALKの十八番だ。しかし、この曲では意表を突く要素で刺激を生むのではなく、巨匠&義勝によるツインボーカルの美しい響きを最大限に活かすことに主眼が置かれている。小野武正(Gt・Cho)による華麗なギタープレイ、八木優樹(Dr・Cho)が叩き出す熱いビートを頼もしい動力としつつ、夕陽に染まる空へと飛翔するかのような展開を遂げるのが、文句なしに気持ちいい。精力的なライヴ活動を重ねてきた百戦錬磨のロックバンドだからこそ奏でることができているポップミュージックが「黄昏シンフォニー」と言うこともできるだろう。
グルーヴィー&ダンサブルな艶めかしいサウンドを響かせるカップリング曲「F.A.T」(作詞作曲は義勝)も収録されているこのシングルをリリースした後、KEYTALKは現在進行中の全国ツアー『KEYTALK爆裂疾風ツアー2017 ~みんなの街でパラリラパパパラダイス~』の後半戦を駆け抜け、各地の音楽フェスにも出演。9月10日には過去最大規模の会場である横浜アリーナでワンマンライヴを行う。全力疾走の日々が続く2017年も、KEYTALKにとって最高のものになりそうだ。
【文:田中 大】
リリース情報
黄昏シンフォニー
発売日: 2017年06月07日
価格: ¥ 1,000(本体)+税
レーベル: ビクターエンタテインメント
収録曲
01. 黄昏シンフォニー
02. F.A.T