レビュー
赤い公園 | 2017.06.20
陸上の三段跳びに例えれば記録を決定する最後の“ジャンプ!”に相当する、赤い公園シングル連続リリース3作目「journey」。大きく息を吸い込み、アカペラで佐藤千明がサビから歌い始めて一気に心を鷲づかむスケール感の大きなこの曲は、記録更新間違いなしのパワーポップだ。青春という誰もが通る道を題材に、誰もの心に響くようにどっしりとしたテンポで聴かせる4分半は、ポップスのセンターで彼女たちがあげる勝利の声なのではないか。この曲を書いた津野米咲は、こうコメントしている。「大人になりきれないのと、子ども心を忘れないことは似ているようで全くの別物なのではないか」。名言である。大人になっても子ども心を忘れずにいることはできるし、子ども心をすっかり忘れた大人は面白くもなんともない。大人と子どもがクロスする青春は、曖昧でいて濃厚な時間なのだ。
そんな思いを綴った「journey」は、どんどん膨らむ希望や初めてブチ当たる壁に右往左往して、つかみどころのない答えを追いかけて進んで行く旅だ。津野はそんな青春を“間違いだらけの答えになれ!”と応援する。青春真っ只中で答えを見つけるなど至難の技。それができないから青春なのだ。まだまだ自分たちもそんなところから抜け出していなくて、だから進み続けるしかない。恥じらいもなく青春を美化するのではなく、迷いも受け入れざるを得ない心の裏側もちらつかせるのが赤い公園らしいところ。答えもないのに諦めて旅を止めることが青春の終わりなのかもしれない。
カップリングの「いっちょまえ」で、一人前になりきれない自分を見つめる歌詞に流れるものは「journey」と通じるものがあるが、曲の印象はガラリと変わる。この振れ幅の大きさが赤い公園の面目躍如。藤本ひかりのファンキーなベースと確かな歌川菜穂のドラムを尻目に津野のギターが自由奔放に暴れまわり、そんな曲の上でシレッと佐藤は地球規模の物語を歌っている。ライヴでシンガロングが起きそうなサビは是非とも覚えたいところ。夏フェスで彼女たちのライヴと出会ったら一緒に歌ってほしい。
今年「にー・しー・ろー」で宣言通りにシングルをリリースしてきた赤い公園。2月の「闇夜に提灯」「放蕩」でアグレッシヴに踏み出し、4月はロマンチックな「恋と嘘」「スーパーハッピーソング」で歩幅を広げ、この6月の「journey」「いっちょまえ」で大きく飛び上がった。2017年前半を駆け抜けた赤い公園は、この夏から後半に向けて一気に攻めていく。
【文・今井智子】
リリース情報
journey
発売日: 2017年06月21日
価格: ¥ 1,167(本体)+税
レーベル: ユニバーサル ミュージック
収録曲
1.journey
2.いっちょまえ