レビュー
indigo la End | 2017.07.07
約9カ月ぶりとなったワンマンライブ(6月23日/東京・EX THEATER ROPPONGI)のMCで川谷絵音(V&G)は、ニューアルバム『Crying End Roll』について「前のアルバム『藍色ミュージック』もすごく良かったと思うけど、それをさらに突き詰められた。今後のindigo la Endの広がりを想像できる作品です。『Crying End Roll』だけで最高傑作とは言えなくて、次の作品、その次の作品につながる大事な作品になっています」と語った。確かに本作は、このバンドの新たな可能性を示唆するアルバムだと言っていい。
先行配信された「鐘泣く命」(ドラマ『ぼくは麻里のなか』オープニングテーマ)、“思い出す男と、思い出される女”をテーマにしたMVが話題を集めた「プレイバック」、ちゃんMARI(ゲス極み乙女。)がリミックスを手がけた「夏夜のマジック(Remix by ちゃんMARI)」などを収録した本作。『Crying End Roll』というタイトルには“(映画のエンドロールと同じように)目につかないところまでこだわって作っていることに気付いてほしい”という思いが込められている。ソウルミュージックのテイストとポストパンク的な音像が共存した「鐘泣く命」、不協和音、ポリリズム的なアプローチを施したギターアンサンブルが刺激的な「知らない血」、緻密に構築されたリズムアレンジ、速弾きのギターフレーズを交えながら、開放的なサビのフレーズにつなげる「天使にキスを」。“間口の広いリスナーが楽しめる歌”と“実験的な要素を含んだ先鋭的サウンド”のバランスがindigo la Endの魅力だと思うが、今回のアルバムでは特に後者の要素が大きく進化しているのだ。メロディメイカー、アレンジャーとしての川谷のセンス、そして、卓越したプレイヤビリティを誇るメンバーの技術が有機的に結合し、ギターロックバンドの可能性をさらに引き上げる。そのスリリングな化学反応こそが、このアルバムの魅力の本質だろう。
しかし本作は、決してマニアックでもなければ、実験のための実験に終始しているわけではない。川谷が紡ぎ出す切なくも濃密なラブソングもまた、これまでの作品以上に質を上げているのだ。以前から「実際の経験によって曲も歌詞も変わる」と発言している川谷。そこから生み出される彼の歌は、“切ない”“悲しい”“幸せ”という単純なものではなく、様々な種類の感情を混ぜながら、聴く者の気持ちをじっくりと揺さぶる。スパッと割り切ることのできない――だからこそ執着してしまうし、影響されてしまう――恋愛感情を描き出す彼のソングライティングは本作のなかで、さらに深い表現へとたどり着いたようだ。
アルバムの新曲は既にライブでも披露され、その豊かな音楽性でオーディエンスを魅了している。秋からはツアーもスタート。泣きながらエンドロールを見ているような感覚に包まれる『Crying End Roll』の世界にじっくりと浸ってほしい。
リリース情報
Crying End Roll
発売日: 2017年07月12日
価格: ¥ 3,000(本体)+税
レーベル: ワーナーミュージック・ジャパン
収録曲
01.想いきり
02.見せかけのラブソング
03.猫にも愛を
04.End Roll I
05.鐘泣く命
06.知らない血
07.ココロネ (Remix by Qrion)
08.End Roll II
09.プレイバック
10.天使にキスを
11.エーテル
12.夏夜のマジック (Remix by ちゃんMARI)