レビュー

10-FEET | 2017.07.18

 今作の紙資料のキャッチ・コピーが非常に的を得ているので、困っている。基本的には参考程度に止め、ふうん、なるほどと頭の片隅に置いておく感じなのだが、これはスルーできなかった。
「結成20年目にして進化の止まらぬこの伸びしろ!新境地!! その向こうの向こうのどこまで行くのか!? 10-FEET!!」というキャッチ。多少の誇張や諧謔も含まれているかと思い、音源を聴いてみたら、本当にそうだった。

 実はこの17thシングル「太陽の月」の冒頭曲「太陽4号」を初めて耳にしたのはライブだった。G-FREAK FACTORYの『FREAKY』レコ発ファイナル公演(6月24日)で10-FEETが対バンを務めたときに、早くもこの曲をやってくれたのだ。そこで聴いたときは近作の「アンテナラスト」(前々シングル)、「ヒトリセカイ×ヒトリズム」(前シングル)の延長線上にある歌もの路線の曲調で、純粋にいい曲だなあと感嘆した。だが、改めて音源でじっくり聴くと、これはもう名曲中の名曲ではないか。10-FEETどこまで行くの!?と腰を抜かすほど驚いた。

 アコギを用い、もはやフォーク・タッチとも言えるゆったりした曲調の「太陽4号」。出だしから「何にも無くなった時 何を残そうかな/誰も居なくなった時 僕はどんなかな」という歌詞で始まる。もちろんバンドはこれからも続いていくだろうけど、この曲が10-FEETのラスト・ソングと言われても納得がいくほど、聴いた人の心にいつまでも居座り続ける、覚悟に似た感情が封じ込められている気さえするのは考え過ぎだろうか。手紙のごとき平易な言葉使い、普段のライブ時のMCをそのまま書き写したような素朴な歌詞が突き刺さってくる。

 字余りや字足らずなんて気にせず、感情の赴くままに歌うTAKUMAのボーカル・アプローチは自由奔放。だからこそ、言葉が、気持ちがまっすぐ伝わってくるのだ。いやあ、新境地というか、ものすごい境地に辿り着いた楽曲である。

 ほかにカップリングが2曲収録されている。2曲目「月~sound jammer せやな~」はレゲエちっくなリズムを用いているが、アッパーな曲調に仕上げている点が面白い。遊び心に溢れた歌詞もいいフックになっており、「せやな」という口語調の歌詞フレーズも一度聴いたら頭から離れない。そして、3曲目「少し眠っていたんだ」はTAKUMA、NAOKI(Ba・Vo)の掛け合いボーカルが大きな聴き所になっている。疾走感がありつつ、明るい雰囲気をまとった仕上がりで、またライブで聴きたい楽曲が増えてしまった。

【文:荒金 良介】

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リリース情報

太陽の月

太陽の月

発売日: 2017年07月19日

価格: ¥ 1,000(本体)+税

レーベル: ユニバーサル ミュージック

収録曲

1.太陽4号
2.月~sound jammerせやな~
3.少し眠っていたんだ

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