レビュー
エレファントカシマシ | 2017.07.26
デビュー30周年を迎え3月にベスト盤をリリース、目下47都道府県を回るツアーを敢行中のエレファントカシマシだが、6~7月にNHK「みんなのうた」でオンエアされていた「風と共に」が、いよいよシングルとしてリリースされる。
ご存知のファンも多いと思うが、実は宮本浩次のソロ・デビューは40年前に「みんなのうた」で使われた「はじめての僕デス」だった。今回のリリースと共にこのことも広く伝えられたためだろう、「はじめての僕デス」が再放送されていた。当時、NHK児童合唱団に所属し、頭角を現していた宮本に白羽の矢が立ったということなのだろうが、堂々として表情豊かな歌は、まさに栴檀は双葉より芳し。今は破天荒に見える宮本だが、基礎がしっかりできているからこそ、暴れても乱れても足元が崩れないのだと納得する。だが宮本はそんなことをおくびにも出さず、エレファントカシマシの“総合司会”として30年間歌い続けてきた。
宮本が40年ぶりに歌った「みんなのうた」となった「風と共に」は、アコースティック仕立ての温かみのある演奏と共に柔らかく年月の流れを振り返り、さらに前に進もうと力強く歌い掛ける。過去を認めながらもそこにとどまらず、新しい自分を探して旅立とうと歌うこの曲のテーマは、宮本の作品に通底するものと思っていいだろう。過去を愛おしみながら、より良い明日を信じて進むという前向きな姿勢は、ずっと彼が歌い続けているものだ。反骨精神に溢れた初期の作品さえ読み解き方によってはその流れを汲んでいるが、苦労を味わったからこそ人生を肯定的に捉える姿勢は、月日を経るほどに彼の中で強まってきたように思える。「風と共に」が40年前からの歴史を改めて紐解くことを踏まえた上で、だから未来に≪幸多かれ≫と歌うところに、この曲の軸足はあるのだ。この曲がTVで毎日のように流れ、子供達が歌ったと思うと嬉しくなる。歌った子供たちは、きっといつか歌の意味に頷く日が来ることだろう。
カップリングの「ベイベー明日は俺の夢」も、旅は続くと歌い出すポジティヴな曲。こちらはダイナミックなバンド・サウンドがざっくばらんな味わいで、コーラスを従えながら≪勝利の美酒に酔いたい≫と前を見る。何があったか胸には涙が溢れていても≪オレにはやることがある≫と、じわりと自らを鼓舞するあたりの起伏が、いいアクセントだ。これもまた、今まで歌ってきたことを俯瞰し敷衍しながら、今が100%だとしても更に進んでいくという強さがエレファントカシマシらしく、ライヴで聴くのが楽しみになる。この2曲で進行中の全国ツアーは更に暑くなっているにちがいない。
【文:今井智子】
リリース情報
風と共に
発売日: 2017年07月26日
価格: ¥ 1,100(本体)+税
レーベル: ユニバーサル シグマ
収録曲
1.風と共に
2.ベイベー明日は俺の夢
3.風と共に(Instrumental)
4.ベイベー明日は俺の夢(Instrumental)